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寒さとは何か一言で言えば恐怖だった。特にマイナス30度で世界が変わる。もっと低温を知る人はマイナス30度と40度はまた別世界というが、レース中に自分の温度計でマイナス40度になったときにはテンションが上がっていて寒いと思わなかった。マイナス30度では皮膚を露出できない。フェイスマスクをしていないとスーパーに買い物に行くにも途中でカフェに避難するレベル。痛くて歩いていられない。暖かいことがいかにありがたいことか痛感する。

寒さは気分にも大きく影響する。レースをリタイアした後は、暖かい部屋にいると「来年もう一度やらなければ」と思い、それならば今のうちにやれる練習をと思ってソリを引いて練習に出かけても体が冷えると「やっぱりこんな危ないことはもうやめよう」と思ってしまう(単に心が弱いだけかもしれない)。それで複数泊の練習をしようと出かけても1泊すると「もうやめよう」となり、1日暖かい部屋で休むと「もう一度がんばってみよう」とやる気を出して出かけというのを繰り返した。暖かい部屋で想像しているのと現場に出るのとはまったく違う。

屋外活動時に問題になるのがグローブを外していられる時間。インナー、シェル、メリノウール(ミトン)、アウター(ミトン)と4枚重ねていたが、細かい作業をするときには外側のミトンを外してインナーとシェルだけの状態になる。この状態でどのくらいいられるかが屋外活動時のストレスに直結する。マイナス20度くらいだとそれほど急がずに食べ物を食べたり、ガソリンストーブを使ったり、ツェルトを設営したりすることが可能。しかしマイナス30度になると1~2分で手が痛くなるためその時間でできることしかできない。いくつかやることがあった場合、1つ作業して手が痛くなったらグローブをはめて手が温まるまで行動し温まったら次の作業というようになる。フォークを使ってラーメンを食べるなどまず無理。またGPSやスポットの電池交換はさらにやっかいで素手にならないと厳しい。あらゆる作業をおこなうときにアウターを外したら時間制限のカウントダウンが始まる。

寒さ対策で最もよかったのはアウターのフードにつけたファー。エスキモーの絵などでよく描かれている顔のまわりのふさふさしたやつ。下見のときはフェイクファー(本物の毛皮ではない)を付けていたが、フェイクファーは凍ると言われ本番はタヌキの毛皮をつけた(れなっちが夜なべしてつけてくれた)。本番のときは支障はなかったが多少雪がついたように凍りかけていた気がする。毛皮の種類によっても違うようだった。効果はフェイスマスクをつけて寒さ対策はできていてもファーがないとまつ毛が凍り、氷がだんだん大きくなってくる。ファーをつけると凍ったまつ毛が解けて氷が落ちる。そのくらい違う。風が吹いても暖かく安心感がある。あえて弱点を挙げるなら視界が狭くなって眠くなりやすくなるくらい。レースでファーを付けている人は少数派でレースの写真を見るとバラクラバ(目出し帽)ごと真っ白に凍りついてすごい風貌になっている人をよく見るがなぜファーを付けないのかと思う。おまけとしてファーが顔の前ではなく横に来るようにフードを被ると耳がとても暖かい。
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■足の汗(蒸気)でソックスとシューズが凍った対策
今回は中途半端にベイパーバリアの考え方を取り入れてしまい、防水ソックスのsealskinzの上にメリノウールを履いた。sealskinzは防水ではあるが透湿性を持つため少しずつ外側のメリノウールを濡らし、それが凍結につながったのだと思う。汗の量や透湿性を甘く見ていたこと、実験をやりきる時間がなかったことが敗因。完全防水のものできちんとベイパーバリアするのか、透湿性で水分を外に出すのか(凍結するのは承知の上で)どちらかに方針を徹底しなければいけない。水分を外に出す場合はメリノウールの上にsealskinzを履く。

レースリタイア後の練習でビニール袋を使ってベイパーバリアの真似事をしてみたが、湿気がこもった状態で長時間せっせと歩き続けるのは皮膚への負担が大きいと感じた。工夫である程度改善できるかもしれないが、1日で1箇所皮膚が剥け、足のあちこちに赤い点々ができてひりひりしてきたので、これさえやれば安心というものではなく別のトラブルを抱えることになるかもしれない。

水分を外に出す方針の場合は超低温で凍りつくのは避けられないため、1日1足の替えのソックスを用意する必要がある。これが新たな課題を抱えずに問題を解決する確実な方法だと思う。ドロップバッグができ日数が決まっているレースに特化したやり方だが、休憩睡眠を削って進み続けるという状況もレースに特化した状況なので、特化した対処でいいと思う。

■グローブの冷えの対策
足ほど顕著ではなかったがグローブも2日目に入り冷たく感じるようになった。ソックスと同様に複数枚の替えを用意する方法もあるが、装備の重量の兼ね合いもあるので足ほど汗をかかず動きの少ない手はベイパーバリアでいいのではないか。今回インナーグローブの上につけたシェルグローブ(その上に本格的な保温と防水の2枚のグローブを着けているので合計4枚)は防水ではないが、これを完全防水の素材(薬品などを扱うときに使うビニール手袋でいいと思う)を使ってはどうか。また使ったシェルグローブは耐久力が弱くぼろぼろになってしまった。

■その他の汗(蒸気)対策
今回は問題にならなかったが、複数日になるとウェアやシュラフにも湿気が溜まり凍結する可能性がある。防水のシートを1枚かませる準備はしておいたほうがよさそう。たとえばウェアはサバイバルポンチョを中間着の下に着るとか、シュラフの中にエマージェンシーBivvyを入れるなど。

■シュラフについて
今回用意したシュラフはNANGAのオーロラ900SPDXにダウン100グラム増量をしてもらったもの。増量なしのノーマル状態で快適温度マイナス27度、限界マイナス45度というもの。下見のときにマイナス35度で就寝したが問題なかった(ただしツェルト内はマイナス20度ちょっと)。しかし主催者の装備チェックでは不可。主催者がレンタルしているシュラフを借りることになってしまった(確かにダウン量、見た目全然違う、限界はマイナス47度だが)。おそらく主催者の基準は疲労しエネルギー切れでマイナス40度から50度まで下がった最悪が重なった状態。レンタル費は非常に高額(数回分で買える)だが素直に主催者推奨のシュラフをレンタルするか買うかがいいと思う。ウェアと組み合わせてとかシュラフインシュラフとか小細工しても装備チェックに通らないと思う。

■ダウンジャケットについて
パタゴニアDASパーカーで不可をくらった。これこそシュラフ以上にインナーとの組み合わせで評価してほしいところだが、DASパーカーだけしか見てもらえなかった。そもそもこちらには経験がないわけで、どの程度の対策をしてほしいか明確に見えている主催者の指示なので従うしかない。ただ今回はシュラフで不可を受けてレンタルすることになったのでDASパーカーは「お勧めしない、できれば今から買ってくるべき」と言われながらも出場は可となった。練習でマイナス35度でも一度もDASパーカーを使わずにしのげているのでそのまま出場した。

レース中のマイナス40度でもDASパーカーを使うことはなかった。動いている限りはの条件付きだが中間着も1枚あまっていた。次回は主催者基準に合いそうなダウンジャケットにする必要がある。DASパーカーの代わりにフィッツロイダウンパーカー(パタゴニアのサポートを受けているので)にする。フィッツロイダウンパーカーで主催者基準に届かなければここだけ他メーカーにするしかないかも。実はDASパーカーよりもフィッツロイダウンパーカーのほうが軽いのでわずかに軽量化になる(化繊とダウンの違い)。そしてあまった中間着の分を替えのソックスにすれば今回の装備と比べてたいして重くはならない。

■ソリへの荷物の積載方法
今回は食料、ウェア、その他装備のように分類して防水袋に入れてカラビナなどでソリに固定していたが、ほとんどの参加者は大きなバッグに荷物をまとめて、そのバッグをソリに積んでいた。細かく袋が分かれていると不注意でカラビナをつけるのを忘れるかもしれないし、カラビナをつけていても外れる可能性もゼロではない。そう考えると他の参加者同様に大きなバッグにして、中に仕切りを作って上手に収納したらいいかもしれない。ほとんどみんなお揃い?のものを使っているように見えたのでソリメーカーなどの製品を調べてみようと思う。またはシュラフ、スコップ、ツェルトくらいの大物だけソリに直付けにして、それ以外をバッグにまとめるようにすれば普段使いのバッグにもできていいかもしれない。


4時起床。飛行機が5時50分なので4時50分までにチェックインする。ホワイトホースは意外と早朝深夜に飛行機が飛んでいて、夜24時近くに到着する便もある。

4時20分にようこさんの車で出発!と思ったら車庫から出るときに除雪されていない場所にバックで突っ込んでしまい車は動けなくなった。押しても脱出できなかったので、カークさんの車で出発。1月に来たときとの帰りとは異なりチェックインカウンターには長い列。4時50分を過ぎてようやくチェックイン。ようこさんに「来年も来ます!」とお礼を言って別れる。カークさんに直接お礼言えなかった。来年行くときはお土産を持って行こう。

飛行機の中では爆睡してあっという間にバンクーバー到着。バンクーバー空港の乗り継ぎは6時間近く待ちだが、来年のレースに向けての改善点(ノウハウ)を文章にまとめていたら、あっという間に時間が経ち暇にはならなかった。バンクーバーから成田への飛行機は空いていて3人掛けシートに一人だったのでゆったり過ごせる。9時間半のフライトだったが楽に過ごせた。飛行機は成田に予定よりも30分ほど早く到着したが、前の飛行機がゲートに止まっていたので定刻以上の待ち状態。日付変更線を越えたので1日進んで25日の17時過ぎ帰国。

成田にはれなっちが迎えに来ていて夕食を食べてから帰る。帰りはバスでさいたま新都心まで行き、そこからタクシー。節約するなら大宮から埼京線だけど特別な時だけの贅沢。1ヶ月近くぶりの日本・我が家はなんだか懐かしかった。夢の時間は終わり、また次の目標に向けてがんばろう。
 

ホワイトホース最終日。11時ごろ出かけて街をぶらぶらする。今日は晴れてさらに暖かい。気温は5度からもしかしたら10度近くまで上がったかもしれない。リバーデールからダウンタウンへは徒歩15分くらい。

街じゅう雪が解けて大きな水溜りだらけ。すっかり春が来たような様子だが、この状態になるのは本来4月らしいので、もう一度寒くなるだろうとのこと。明日からはまた最高気温がマイナスになり寒くなっていくようだ。この暖かさは1940年以来だとか?1月の下見のときには寒さが続いて電力の消費が過去最高とニュースになったりしたというのに。ユーコン川の氷も解けてきてあちこちで割れた氷が積み重なっている。2週間前に川の上をソリを引いて歩いていたなんて想像できない。街をぐるっと一周しメインストリートの土産物屋でほしいものをいくつか買って17時前にリバーデールの滞在している家に戻る。

ようこさんとポリーンさん宅へ出かける。いつものようにようこさんが寿司(太巻きだがこちらでは寿司と呼ぶ)を作って持っていく。今日はポリーンさんが出張で不在でロジャーさんと3人で食事。レースの報告とソックスが問題だったことを伝える。来年またやりたいと伝えると嬉しそうにしてくれた。少しずつ学んでいけばいいとのこと。ほんとにこのレースは経験するべきこと、学ぶべきことが多い。あと次に来るときは自分も寿司作れるようにしてこよう。れなっちが作ったちゃんこ鍋も気に入ったらしい。あとモカシンはシューズの上に履いてみたら?とのこと。

ようこさんとカークとマイク(ようこさん宅の居候)がグレートレースのプロローグ(NHK-BS1)で、れなっちがテーブルに着いている私にお茶を持ってくる場面を見て、カークとマイクは「日本では男性は座っていて女性が食卓の準備をする」と理解したらしく、ようこさんはなぜそうではないんだと言われたらしい(笑)ということを聞いていたのだが、ロジャーさんまで同じことを言い出した(ようこさん通訳)。あれはカナダ人の教育によくない。

今回のレースでは、日本ではもちろんだが、現地でたくさんの人にお世話になりレースを超えたいい経験、財産を得ることができた。財産とは人と出会えたことかな。見ず知らずの人間を(もうお友達だけど)泊めてくれたり、知識をくれたり、サポートしてくれたり、夕食に招いてくれたり、みんなユーコンが好きでここに住んでいる人たちだったけど自分にとっても特別な場所になった。さらに自信を持って特別と言い切れるためには、やっぱりYukon Arctic Ultraを完走できたら最高かな。430マイルの部は2年に一度なので、来年は300マイルの部が最長だけど、それでも今の自分には遥か遠い目標。

明日の朝ついにホワイトホースを離れる。今年になって日本にいた日数よりもユーコンにいた日数のほうが多い。下見と合わせて30日以上ユーコンにいるため、3月の1週目を終えるくらいでやっと日本にいる日数のほうが多くなるという。

櫛田さんからメッセージがあり、お客さんが北のほう(ドーソンとか)で車を路肩に落としてしまい救出に行かなければいけないので、明日の朝空港に送れなくなったとのこと。元々の予定通り、ようこさんに送ってもらうことになった。


今日はどうしようか考えながらもぞもぞ起き出してやっぱりグレイマウンテンに再アタックしてみることにする。山に行くならもう少し早く起きるべきだったが、けっきょく昨日と同じ。しかし今日はしっかりした装備で行くつもりなので戻りが夜になってもいいだろう。

カークさんに今日はグレイマウンテンに行くと言うと車で送ってくれるという。時間の節約になるので大変ありがたい。昨日ようこさんに送ってもらったところまで送ってもらい12時スタート。昨日とまったく同じ。山頂へのトレイルが左手にあるはずなので注意しながら進む。なければそのまま電波塔まで行き雪の深い稜線をピストンしようと思う。

左手に細いトレイルがあるのを見つけた。細いけど人が多く入っているようで硬くなっている。反対側の右手のほうにも同じように細いトレイルがありこちらは街の方向に降りていっている。そっち方面には案内が立っていて「EASY MONEY」と書いてある。トレイルの案内か何かで見たコース名称なので山頂につながる道かと思って左手に登って行く。どんどん高度が上がり期待大。しばらくするとベンチのある展望台のようなところに出た。ここは独立したピークになっていて、グレイマウンテンに行くには一度降りなければいけなさそう。登ってきたのと反対側にも薄く踏み跡がついているので降りていくと電波塔に向かう林道に出てしまった。

ただそこから林道とは別の分岐があり案内には「MONEY SHOT」と書いてある。これがまさにグレイマウンテン山頂につながるトレイルだ。やっと見つけた。少しトレイルに入り込むと尾根に上がる踏み跡と沢を進む踏み跡に分かれた。山頂へのトレイルは尾根にあるはずなので尾根を選択。一部急斜面を登って行く。分岐付近はしっかり踏み固められるくらいの足跡があったのがだんだん薄くなってくる。そしてついになくなってしまったが行けるところまでと尾根を登って行く。すると岩の崖に阻まれてしまった。それでもこの辺りの尾根に夏山のトレイルがあるのは確かなので崖を回り込んで登れるか多少藪をどけながら左右の様子を見るが難しそう。崖を見上げるとその上にも階段状に崖が見える。崖と言っても垂直なわけではないが落ちたら危険なのでやめることにする。

下まで戻り沢沿のトレイルも少し進んでみるが、やはりだんだん薄くなってなくなってしまった。おそらく最初の人が行けるかな?と入ってみてやっぱりやめて、次の人が踏み跡があるところまで行ってそこから少し先の様子を見てやめて、また次の人がと繰り返しているうちに踏み跡が延びていったんじゃないかなと想像。だから入口に近いほどはっきりしたトレイルになっている。だとすると今回尾根のほうはけっこうがんばって延長したので次の人は崖を超えることになり危ない。

正規の登山道が埋まっていてしかも崖があることが確認できたので、もし電波塔から山頂に行ったとしても登山道を降りてくる気にはなれない。時間もけっこうロスしてしまったがとりあえず電波塔まで行ってみるかと林道を進む。するとまたも左手に分岐。けっこう無理やり直登している感じだが足跡はたくさんある。ハイキングマップにもこんなところに道はなかった。冬限定のルートなのか?とりあえず行ってみることにする。急斜面だが踏み跡はしっかりしている。高度もどんどん上がり電波塔よりも高くなった。

いよいよ山頂か?というところで踏み跡に点々と赤いものが混ざっているのに気がつく。これは血かな。気持ち悪いなと思いながら赤い点々と足跡を追っていくと岩の崖がある。そこに大きな穴が空いていて赤い点々と足跡はその穴の中に消えていた。そこ以外に踏み跡はない。GPSを見ると岩崖の上あと少しくらいのところが稜線で、上がったら稜線の移動距離はわずかで山頂。しかし残念だけどそっと立ち去ることにした。血?の跡が続いている穴に近づきたくない(笑)崖の上に上がるルートもぱっと見わからないし。

すっかり時間も経ってしまったし、いまから電波塔経由で山頂を目指すとかやる気がなくなってしまったので帰る。1つ確かなことはここしばらくの間にグレイマウンテンの山頂に立った人はいない。長いロードを歩いて17時過ぎに帰着。移動距離17km。ホワイトホース市民のお手軽トレッキングコースは手強かった。さすがユーコン!おそるべし!2日続けて敗退するとは。これでユーコンでのアウトドア活動は終了。明日は滞在最終日で街をぶらぶらしようと思う。


朝10時、Yukon Arctic Ultraの430マイルの部の制限時間。しかし選手はとっくに全員フィニッシュしていたみたいだ。2日目の大量リタイアのあとはみんな順調に行ったのだろうか。

今日はグレイマウンテンに行く。滞在中のリバーデールからは10km程度なのですべて自走でも行けるがようこさんが学校に行く時に車で入れるところまで送ってくれることになった。12時ごろ登山開始。グレイマウンテンの南側にある電波塔まで行きそこから北に向かって稜線を進んでグレイマウンテンへという道を選択した。登山といっても電波塔までは林道に雪が積もったような場所を歩いて行くことになる。距離は遠回りだが歩きやすいし傾斜はきつくない。

途中までは車のタイヤ跡があったが途中からなくなり人の足跡が少し残っているところもあったが、最近は人は入っていない感じだった。電波塔は稜線に立っていて電波塔に到着すると山の向こう側の景色が見える。どこまでも人の手はほとんど入っていないであろう(実際どうかは知らないけど)自然が広がっていて圧倒される。

今日は風が強く稜線に上がると気温はそんなに低くないと思うがかなり寒く感じる。あとから調べた天気予報(おそらく実績値?)によると体感気温はマイナス10度以下になっていたようだ。
グレイマウンテンに行くにあたってようこさんから事前にはホワイトホース市民が手軽に登れるトレッキングコース。2時間くらい。と聞いていたので、じゃあ自分だったら1時間で登れるか?最大で登り2時間、下り1時間くらい?と考えてそれなりの軽装備。

シューズはモカシンのテスト(先住民族ポリーンさんに借りたもの)、ソックスはメリノウールソックス1枚、SKINSのタイツにアルパインガイドパンツと薄めの装備。氷点下の稜線で風に吹かれると寒い。食料お湯もそんなにたくさんは持って来ていない。

電波塔からグレイマウンテンまでの稜線はすべて見通すことができ、GREY MOUNTAIN SUMMIT TRAILと書かれた案内が立っている。トレイルと思われる方向には人の入った形跡はまったくない。そちらに足を踏み入れると脚の付け根近くまでずぼっと落ちた。スノーシューを持って来ていたので電波塔のそばの吹き溜まりの影で装着。柔らかいモカシンに付けれないかもと思ったがなんとか大丈夫そう(適しているとは言えない)。コーンスープを2杯飲んで給水兼エネルギー補充完了。距離も標高差も大したことないのでなんとか行けるかも。

トレイル(まったく跡がわからないが)に入ってみるとスノーシューでも膝上くらいまで雪にはまる場所がある。これだとかなり時間かかりそう。また山頂からはようこさんが登ったことがあるというロードからの距離の短いトレイルを下るつもりでいたが、もしかしたら山頂からの下りもトレイルがわからないかもしれない。その場合、危険箇所があるかもしれないため、稜線を戻ってくる必要があるかもしれない。加えて使い慣れていないモカシンを履いている。ということでいろいろ不安なのでやめることにした。

ようこさんが登ったことがあるという登山道もけっこう等高線が詰まっているし、この積雪では登るのは大変(困難)だと思う。たぶん市民のお手軽トレッキングコースなのは夏の話で、冬に登る山ではないのだと思った。フィッシュレイクに行くトレイルをソリを引いて歩いていた時はスノーモービルのトレイルがたくさんあり、それを外さないように歩いていたから可能だったわけで、こちらの山にはスノーモービルは入っていない。少なくとも登るなら数時間稜線で風に吹かれていてもいい装備で来なければならない。

電波塔から緩やかな下りをどんどん戻る。下りになると裸足感覚のモカシンのかかとでスノーシューのリフターを踏むので違和感が大きい。途中でスノーシューを脱ぐ。車のあとがしっかりついている場所まで来ると今度はモカシンの硬い地面への接地で足のダメージが大きそう。やっぱりモカシンをレースに使うのはNGだなと思った。それを履いて生活してきている先住民族だから生きるのであって、ちょっとアウトドアが好きな都会人が簡単に使えるものではない気がする。軽くて温かいし面白い履物なんだけど(先住民族に伝わるものを面白いというのも失礼かも)1日ならともかくエクスペディションで使うわけにはいかない。明後日ポリーンさんに返しに行った時なんて言おうかなーと思うが、そのまま伝えるしかないよな。日本で売られているシューズでも(日本のメーカーに限定しても)メーカーやモデルによって好き嫌いが出るのだから、その道具の良し悪しではなく合わないというのはあって当然だろう。

ようこさんに車で送ってもらった場所を過ぎると普通にロードになる。路肩の雪が柔らかくかつ深くないところを選んで走ったり歩いたり。バイアスロンの練習場があり銃声が聞こえている。
おそらく5~6kmだと思うが長く感じるロードを終えてリバーデールに到着。スーパーでお菓子と甘いパンとサッポロ一番とジュースを買って帰る。ちなみにこちらで一番と言ったらサッポロ一番のことなんだそうだ。本来の意味は知らずに商品名が定着しているらしい。帰宅は17時過ぎ。約5時間で19km。

櫛田さんからメッセージがあり24日の早朝に空港へお客さんの送迎があるからついでにピックアップして連れて行ってくれるとのこと。

ホワイトホース出発まであと2日。明日もう一度グレイマウンテンにアタックするかどうか。でも電波塔からでも見える景色は変わらなさそうだったしロードも稜線も楽しいというより修行にしかならない気がするから悩む。
朝から仕事のメール問い合わせの対応。それからレースレポート書き。最近ホームステイ先に停滞している時間が多いが、帰ってからのことのいろいろな調整やレポート作成、文章作成で有効に時間を使えていると思う。暇はしていない。

お昼にようこさんが帰って来て、残りの日はカークさんの上司の家に滞在しませんかと提案がある。どういうことかというと、カークさん(ようこさんの旦那さん)の上司がハワイに長期間遊びに行っていて、その留守番で蒔ストーブで家を温め犬の世話をしておくことを依頼されているため、家を自由に使ってよいことになっているとのこと。こちらの家ならダウンタウンにも15分くらいで歩いていけるし、スーパーも近くにあるし、グレイマウンテンというお手軽トレッキングコースもあるそうだ。

そこで最後に焚き火をもう一度やっておくことにした。ダウンタウンのほうに行ったら焚き火はできないし、日本に帰ってもそこいらで適当にというわけにはいかないので。あとは昨日アウトドアショップで購入した小さいノコギリの切れ具合の確認。なぜ急に小さいノコギリを買ったかというとレースの必須装備になっていて、今回はビクトリノックスのノコギリ付きのモデルを持って行ったが、単機能のほうが軽くて使いやすいと思ったため。焚き火を長時間やる場合には太い木をノコギリで切って燃料にしなければならない。今日は人の家の敷地内なのでそんなに太い木は切らないけど(適当に林になっているので枝を取って焚き火を作るのはOK)。

今日は時間もないので木の枝も少量で短時間で小さい火を作る。相変わらずスタートは着火剤を使うけど、すぐに火をつけることができた。今まで大量の木の枝を集めて量を頼みに火を着けていた感もあったが、今回は最小限で素早く。そこにノコギリで切ったやや太めの木の枝を加えていく。ノコギリはやっぱりビクトリノックスよりも単機能のもののほうが使いやすい(ビクトリノックスも質は十分にいいけど)。火が小さくなっても新しいのを取ってくるのではなく周辺で燃え残った木の枝を真ん中に寄せて火を維持していく。これなら木の枝を集めるのにそんなに時間はかからないし、ちょっと手足を温める、雪を溶かして水(お湯)を作るくらいなら十分だと思った。ただ次回はレース中に焚き火を作るようなことはなしにしたい。

荷物を片付けて移動の準備。毎日せっせと食べているけど行動食が山のように残っているので、2日分だけ手元に残してあとはようこさん宅に置いていく(4日分くらい)。それでもけっこう荷物が多く、帰りに預け荷物2つ、手荷物1つに収まるかなと心配になる量。整理すればなんとかなるとは思う。カークさんの上司宅に移動。なかなか裕福な方のようで家じゅうに膨大なアウトドアギアとトレーニング器具で溢れている。いったい何種目やっているんだ?MTB、スノーシュー、クライミング、トレラン、シュラフとマット。。。これが2つや3つじゃないくらい置いてある。ハンティングもするそうで地下の大きな冷凍庫には肉屋か!?というくらいいろんな肉が冷凍されていた。肉も自由に食べていいらしい。

そんなわけで明日はまずグレイマウンテンに登ってみようと思う。


昨日から荷物の片付けに入っている。今日は主催者からのレンタル品(ソリ、ハーネス、シュラフ)をホテルに届ける。本来リタイアしたときに返すべきものだが、レースを続けていれば21日まで使うはずのものなので練習したいと継続して持っていたもの。

14時に櫛田さんが車で運搬してくれるために来てくれた。ダウンタウンでコーラとお菓子と肉を買いたかったので車に乗って一緒に行く。ホテルに荷物を届けてアウトドアショップの前で車から降りる。「また来年出直してきます」と櫛田さんにお礼を言って別れる。ほんとに実際に会う前からネットで意見をくれて、現地で会ってからは常にサポートをしていただいて、大変ありがたかった。必ずまた再会したい。

最近の暖かさでダウンタウンの様子もすっかり変わり道路の雪はほとんどない。その代わりに大きな水たまりがいたるところにある。ユーコン川の氷もだいぶ溶けている。櫛田さんによると最近の気温は4月上旬並みなのでもう一度寒くなるだろうとのこと。アウトドアショップに寄って小型のノコギリを買い、North end galleryでお土産を買い、マクドナルドで休憩して、スーパー(インディペンデント)で食べ物を買った。

ここからは観光も兼ねてホームステイ先まで歩いて(多少走って)帰る。観光といっても途中には何もないが、自分の脚で地形や距離感を感じることが自分にとっての観光になる。ダウンタウンからは13kmほど離れていて最短距離になるのはアラスカハイウェイ。しかし路肩の狭いところもあるしハイウェイなので危険。櫛田さんからはダウンタウンから山側の道に上がって、そちらから帰ったほうがいいと言われている。

ダウンタウンのはずれのユーコンエネルギー(電力会社)のところからアラスカハイウェイに向かわずユーコン川沿いに道路があったのでそこから行ってみることにする。最初は除雪されていたが途中から冬季クローズされた道路になり雪がざくざく。暗くなりヘッドライトをつける。道の分岐とかGPSでよく確認して、買い物帰りとは思えない様相になってきた。けっきょく全てユーコン川沿いでホームステイ先まで戻れる道はなく途中からアラスカハイウェイに出る。ハイウェイを1?2km走った後反対側に「mt.SIMA Road」と書いてある道の入口を見つけたので、道路を渡ってその道に入り山に向かって緩やかな登り坂。するといつもソリを引いて通る道に出た。そこからはスロージョギングでホームステイ先へ帰宅。

戻ったら20時30分で3時間くらい走り歩いていた気がする。距離は15kmくらいだと思うが。ホワイトホース滞在はあと4日(もうやることないけど)。
■2月16日(月)


前回のソリ練習でもう終わりにして後は帰国日まで町に行ったりだらだら過ごそうと思っていたのだが、フィッシュレイクの氷の上をもう一度歩きたいと思い、一人ユーコン二回目を実施。せっかくフィッシュレイクまで行ったら自分の写真も撮りたいし、オーロラが出たら写真に撮りたいので、ようこさんにカメラの三脚のネジを借りようと思う。ところがストックを持って来て取り付けて部分を見るとネジだけがなかったのが土台まで落として来てしまっていた。土台部分はGoproを付けれるようになっているので、これでGoproの自分撮りもできなくなってしまった。仕方がないのでようこさんに大きな三脚ごと借りる。

今日はベイパーバリアはおこなわない。がっつり動いてどのくらいソックスが濡れるのかを再度確認する。また荒れたトレイルを楽に歩けるのではないかとスノーシューを持っていく。スノーシューはレース期間中にまとまった雪が降る予報が出た場合にドロップバッグに入れようと思って持っていていた(たぶん使わないけど一応という感じで)。

準備に手間取り11時20分に出発。夜早めの時間にフィッシュレイクに着きビバークして明日の朝フィッシュレイクで遊んで午後早い時間に帰ってこれればという計画。なくなったGoproの取り付け部が道に落ちていないかと、前回戻ってきたときの歩いた場所をなぞってみる。すると見つけることができた。助かった!

トレイルの入口でスノーシューを履いて歩き始めると前回よりも格段に歩きやすい。重量が増えているのに重さは感じない。さくさく歩いているときふと「ガソリンストーブのポンプはどこに入れたっけ?」と思う。重要装備が荷物のどこにあるのか思い出せないのは気持ち悪いので荷物やポケットを漁ってポンプを探すが見当たらない。基本的に前回の荷物をソリに乗せっぱなしでいて、それを持ってきているのになぜポンプだけないのか。なくても焚き火でお湯わかせると思ったが、たかが練習でストーブを使えないリスクを取りたくないので戻ることにする。もう10kmくらい進んでいるので往復で20kmのロス。20kmという距離は時間にするとちょっとした補給の時間を考慮すると約5時間にもなる。朝出発するつもりだったのが実質夕方出発というまったく違う行程になってしまう。

ポンプは部屋に置いてありそれを持って再スタート。17時20分、もうすぐ日が暮れる。。。フィッシュレイクのがっつり登りに入るときにはすっかり夜に。薄っすらとオーロラも出ていたが今日は薄曇りなので写真を撮りたいほどのオーロラにはならず。暗い山を歩いていると「もし自分と同じことをしている人に出会ったら怖いだろうな」と思う。夜23時過ぎに下のほうから猛スピードで上がってくるスノーモービルがあった。男女2人乗りで「Helloー!」と声をあげて走り去って行った。東京で言うと夜の首都高ドライブというところだろうか。

23時半ごろ稜線に登りきる。ホワイトホースの夜景が見えるのはここまで。先に進むとフィッシュレイクが見え始めホワイトホースは見えなくなる。フィッシュレイクのほうに降りて行って樹林帯に入るする手前にツェルトを張る。風もあるし本来は樹林帯に降りてビバークするべきだがオーロラが出たら写真撮りたいし、見晴らしがよければフィッシュレイクの向こう側の山が朝日で赤く染まったりしないかなと考えた。風の中でツェルトを張るのは少々手こずった。おそらく2時ごろ就寝。

■2月17日(火)

朝を迎える前に寒くて目を覚ます。気温はマイナス2度。数字上は全然寒くない。マットが地面からの冷えを防げていない。前回はサーマレストZliteSolで大丈夫だったのに今回は完全に雪の上だからか明らかに冷たい。シュラフの中が濡れているのかと思うほどだ。あとは寝るときに脱いでシュラフの中に入れてあるsealskinz。これは本当に濡れている。内側は湿っている程度だが気温が上がったため雪が溶けて外から濡れている。シュラフの中に濡れたものを入れて寝て乾かすというのは無理だと思った。少なくともレースのように停滞時間が短いものは。凍らないようにすることと、最初に着用するときに温かくなっていて身につけた瞬間に体力を奪われないようにする程度と考えるのがよい。あと焚き火でも完全に乾かすのはまず無理だと聞いた。

8時過ぎに起きて朝食にし、800mlほど残ったサーモスのお湯を温めなおす。雪から作らなくてもこれだけで帰りの分までまかなえるかどうか?喉からからでも帰着後に飲み食いできればよいということで。9時行動開始。またちょっと遅くなってしまった。フィッシュレイクを歩き回り、凍った湖の真ん中で休憩したりのんびり過ごした。気温も0度くらいで普通にそこにいても寒くない。12時に戻り始める。少しのんびりしすぎた。ようこさん宅帰着は日没後になりそう。

ソリを引いて出かけるのはこれで最後なのでGoproやデジカメで撮影したり残りの時間を精一杯楽しんだ。フィッシュレイクから櫛田さん宅近くのトレイルに降りたところでお湯を使い切る。残り13kmくらい。途中からやっぱりヘッドライト点灯。トレイルから道路に出たときにはすっかり夜。昨日からの一日で道路の様子が変わっていて路肩の雪がだいぶ溶けてなくなっていた。交差点など車が多く通るところは雪がなくなって完全にアスファルトになっているところもある。ときどきごりごり音を立ててソリをアスファルトの上で引くことがある。ソリをもっと長く借りていたとしても移動不可能になるな。ようこさん宅到着は20時30分。33時間10分、75km。

これでユーコンでのソリ練習は終了した。下見、レース、レース後を合計すると300km以上ソリを引いてユーコンを歩いたことになる。試しておくべきことはだいたい試せた。来年出場できる状況を作って、マイナス40度の対策をして、来年もぜひマイナス40度まで冷えてほしい。
■2月13日(金)

13時スタートでロング練習(一人ユーコン)へ。レースのとき自分の汗でソックスとシューズを凍らせてしまったため、その対策として何ができるのかということでベイパーバリアライナーを試す。ベイパーバリアライナーは製品もあるが、今実験するためビニール袋で代用する。ビニールの上からメリノウールソックスを履き、さらにsealskinzを履く。

気温は毎日マイナス一桁むしろ0度近くまで上がってしまったが、1日履いてメリノウールソックスが湿っていなければ成功だろう。コースはマウントシマスキー場のあたりからコールレイク方面に登って行くトレイル。どうしてもホワイトホースから長距離トレイルを歩こうとすると登って行くことになるためレースのコースよりもハードになる。

途中で山から降りていくスノーモービルに出会った。しばらくしてスノーモービルが戻ってきて「あなたのか?」とグローブを差し出す。いつのまにかグローブを落としていた。カラビナでソリのハーネスにぶら下げていたのにどうやって落ちたんだろう。厳しい環境で装備を紛失するのは物によっては命に関わるし、今回お世話になっている櫛田さんにもことあるごとに言われているのに、十分気をつけているつもりでもこういうことがおこる(実は今回レース中含めけっこうぽろぽろ落し物、忘れ物をしている)。スノーモービルの人が「どこに向かっているかわかっているか?この先雪が深くなるぞ」と言った気がする(英語あまり聞き取れないんで)。「わかっている。今夜はキャンプする」と伝えて先へ進む。

だいぶ暗くなってきた頃、山頂というわけではないと思うが(広いピーク?)展望台のようなところについた。看板が設置されていてスノーモービルや人の足跡がたくさんある。下のほうに照明のついたアラスカハイウェイが見える。ヘッドライトをつけてしばらくスノーモービルの跡を進むとスノーモービルが引き返した形跡がありトレースがなくなってしまった。流石に冬に夜に初めての場所をトレースなしで進む気になれず引き返すことにする。

山から下りてマウントシマスキー場を通過しいつものトレイル(whitehorse copper trail)へ入る。
トレイルは昨日降った雪と、あと気温が上がったためか雪が柔くて歩きにくい。加えて眠くなってくる。櫛田さんの家の近くのトレイル入り口(オーロラ見に来たところ)まで行ってキャンプにしようと脚を進め続けるが右左に蛇行しているのがわかる。なんとか耐え切って午前2時30分到着。車に踏まれて雪が薄く硬くなっているところにツェルトを立てる。

ソックスを脱いでみるとツェルト内に異臭が立ち込める。ベイパーバリアで汗を封じ込めるとこんなひどい臭いになるのか。でもソックスは乾燥したままで効果は十分ありそうだった。もう一つの試しはマット。レースで使ったサーマレストXサーモはマイナス30度以下でも寒さを感じなかったが、ちょっと横になりたい程度の休憩のときにもいちいち膨らませないといけないのと、付属のスタッフサックを使って空気を送り込めるようになっているのだが、超低温時に空気が送り込めなくなってしまい(吹き込み口のプラスチックが硬くなるから?)レース中は口で空気を吹き込んでいた。口で吹き込むと息に含まれた水分が凍りつくという問題があり、レース中は3回目の使用時に凍結で空気が入れられなくなった。これは吹き込み口をお湯で温めてから使うことで解決はしたが。性能はよいが問題がないわけではないので今回は予備で持って来ているサーマレストZliteSolを使用。薄いのでレースで使うとしたら2枚重ねるなど対策が必要だろうけど、マイナス一桁くらいの気温なら単体で使えないと困る。まったく寒さを感じることなく就寝できた。

■2月14日(土)

目を覚ますと8時30分だった。すっかり明るくなっている。食事をして装備をまとめて9時30分に出発。7時間の停滞になった。ぐっすり眠れたのはよかったが、夜フラフラになるまで歩いて明るい時間まで寝ているよりも、もっと早くキャンプにして明るくなりはじめた時間に動き出したほうがいいと思った。レースのときも同様。自分はやっぱり眠いのを我慢して動くのは苦手だ。

1時間ほど歩いたところでお湯の残りが少ないのでお湯を満タンに作っていくことにする。空の状態から2.2リットルのお湯を満たすまでどのくらい時間がかかるか測ってみた。雪から沸騰までなかなか到達せず1時間10分くらいかかってしまった。これは時間がもったいなさすぎる。お湯の作成はビバーク時にツェルトの準備と同時進行でおこなうべきだった。あるいは水分を取るという意味でなら沸騰までいかなくてもよいのだが、自分の場合は食欲を維持するためにフリーズドライ食品を多くしているため美味しく食べるためには少しでも温度の高いお湯を用意しておきたい。

デジカメをストックに取り付けて自分撮りするための部品の先端のネジがなくなっているのに気がつく。どこで落としたんだろう。戻るときに探してみようと思う。copper trailの反対側(北側)端まで歩いて折り返す。行きの後半はずっと緩やかな登りに感じていたため、折り返したらスピードアップするぞと期待していたのだが、折り返してもずっと緩やかな登りに感じる。この錯覚はなんだろう。デジカメのネジを探しながらトレイルを戻っていく。真っ白な雪の上に黒いネジだからあればわかるだろうと思ったが見つからない。

夕方になると爆音を響かせたスノーモービルのグループがトレイルを行ったり来たりしている。走り屋みたいなものか。copper trailとようこさん宅への道の分岐点まで来たがデジカメのネジは見つからなかった。ということは、昨夜山からの下りで自分撮りを使っているのでマウントシマ前後数キロの範囲で落としたはずだと思った。しかしネジだしまあいいか。

19時30分に生存報告のためようこさん宅戻り。Day1終了。30時間、移動距離70km。レースで言ったら完走ペースを下回っている残念なペースだが、レースにはないがっつり登りがあるしトレイルも新雪が荒れてざくざくで歩きにくかったので、実際はもっといいペースが作れるだろう。レースのコースはコース整備が入った上に先にスタートしたユーコンクエストに犬ぞりたちが通っているためトレイルはしっかり硬くなっている。ベイパーバリアライナー代わりのスーパーのビニール袋は破れてしまったので、2日目は薄いネオプレンソックスを履いていくことにする。れなっちがドロップバッグに仕込んでいたバレンタインチョコ(仮)を食べて20時45分に再出発。

再びざくざくに荒れたcopper trailに入る。歩きにくくテンション下がる。するとカーテンのようなオーロラが目の高さの空をゆらゆらしている。明るい光がさーっと流れていくので写真に撮りたかったが残念ながらカメラのネジをなくしているので夜景モードできちんと撮影できない。いちおう手持ちで撮ったが手ぶれ込み。レース中など山行中に見る星空は天体観望などそれ目的で出かけたときよりもなぜかきれいに感じるので好きなのだが(その割りに夜は即眠くなるが)山の中で見るオーロラも格別なものだった。しばしオーロラを眺めていたら、もう十分がんばったから帰ろうと思う。暖かい部屋にいると次はこんな練習しようとか、来年もう一度チャレンジとか思うのだが、寒かったり、暗かったり、眠かったりするとすぐに「やっぱり大変だな」と弱気になってしまう。24時ごろ引き返し始める。トレイルを出てから8kmほどは道路の路肩の雪の上を歩くのだが、眠くなってときどき意識が薄っすらとしかなく、気がつくと「ここはどこだ?」というようなことがあった。帰り道の途中でも明るいオーロラを見た。気温はそんなに低くないと思うが日中汗をかいてそのままのためかグローブがすごく冷たく感じる。やはり少しでも水分がついたものは低温になったり風を受けたりするととたんに冷たくなってくる。

3時30分ようこさん宅帰宅(変な時間に帰ってすみません。心折れました)。Day2、6時間45分、20km。即席ベイパーバリアのネオプレンソックスを脱ぐと一箇所皮膚がむけていて足のあちこちに赤い点々ができていた。専用商品でない適当なものだからというのもあるとは思うが、黙々と長時間歩き続ける今回のような用途にはもしかしたら向いていないかも。ベイパーバリアの実績がある登山や探検ならたぶんもっと動きはゆったりしたものだろうと思う。力技だけどソックスは日数分用意して一部ベイパーバリア併用。動きの少ないグローブはベイパーバリアなんていう方法がいいかもしれない。
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なぜか砂漠にひかれサハラ・アタカマ・ゴビ・南極でおこなわれたレースに出場。これからも世界の絶景を見に行きたい。
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