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<3月17日>
トレーラーに入ると選手2人仮眠中。1つ前のCPイヌビックで同じコテージの部屋を割り当てられていた選手だ。イヌビックでは私が寝る前に出ていったから5時間以上差があったはず。ここでまだ寝ているということは差を詰めてきたかもしれない。軽く食事をし少しでも乾かしたいウェアをストーブの周りに並べてトレーラーの床にシュラフを広げてもぐりこむ。トレーラーの中はがんがんストーブが燃えているが床はそれなりに寒い。ちなみにトレーラーの外壁もキンキンに冷えているためウェアを壁際に干すと、ストーブの熱にあたる室内側は乾いてくるが、外壁に触れた部分は凍ってしまう。少し寝た後トイレに出てトレーラーに戻ると寝ていた選手が起きて出発の準備をしている。1つだけ簡易ベッド(キャンプ用ベンチみたいな感じ)がありそれが空いたので、そこで寝るように勧めてくれた。ありがたい、これで冷えを感じずに寝れる。6時半に目を覚まし動けそうな感じがしたため「7時に出発しよう!」と思ったが、ふと気が付くと9時45分!?何が起きたのかわからないくらいで3時間以上経過してしまった。盛大な2度寝。寝心地のいいベッドを譲られたのが悪いほうに出たか?飛び起きて出発の準備。荷物をソリに放り込んで朝食も取らずに10時15分出発。


見渡す限りまっ平らな雪原。昨夜CPに着いたときに感じたような段差はない。ただただ白(氷)と青(空)の世界が広がっていた。ただ大幅寝坊により浸っている暇はない。さっさと出発ししばし歩いてから荷物が少し気になった。急いで出発したため適当にバッグに突っ込んだだけになっている。何がどの辺に入っているのかイメージできないと気持ち悪い。食事もしていないので食べて、飲んで、荷物整理をしていくことにした。整理するとチタンカップがない。トレーラーで食事に使った後ジップロックに入れて着替えと一緒に置いたところまでは覚えている。出発するときにその辺の荷物を持ってきたつもりだったが置き忘れたようだ。これがないと食事はともかく緊急時に水を作ることができない。最終区間だからいいけどもっと早くカップを失くしていたらまずいことになっていた。カップは何か別のもので代用できないので、次回があれば予備を持ったほうがいいかも。去年も最終的に手元に戻ってきたとはいえ一時カップを紛失して冷や汗ものだったし。

チタンカップを失くしてチキンラーメンをお湯で戻すことができなくなったため、そのままぽりぽり食べながら歩く。しばらくしてGPSを確認すると時速4km出ていない。これまで状況が悪いとき以外は多少の停止時間含めても時速4kmは出ていたので気の緩みが出ているような気がする。CPでの2度寝然り。完走目標で順位は気にしていないとはいえレースはレース。気合いを入れるためにしばらくの間走ることにする。走って、走って、少し歩いてという感じで進む。CPを出発するときにあと2人後ろにいた気がするので、その2人には抜かされないようにがんばろうと思った。自分から崩れなければこのまま行けるはず。しかししばらくして後ろを振り返ると1人選手が間近に迫っていて驚く。後ろに誰もいないときに走りを多く入れ始めて後続との距離は離す一方だと思っていたのだが、見た感じずっと歩いている選手に追いつかれ、抜かされた。走れば一時的には再度前に出れそうだが歩きのスピードが全然違う。無理に後ろについても大変なのでそのまま見送ることにした。


日が傾いてくると今日も急激に冷え込んできた。風も少しあるので風に背を向けてソックスを変えたりグローブを変えたりする。グローブはこれまでは緊急用として使わなかったダウンミトンを使ってみる。さすがにメリノウールのトリガーミトンよりも断然暖かい。残りの距離はまもなく残り30kmくらいか?というところに来ていてフィニッシュへのカウントダウン。それでも念には念を入れて自分の体を少しでも快適に保つ。一時停止したすぐそばにポールの先端にパネルのようなものがついたものが数本立っていた。なんだかよくわからないが日本の道路だったら峠道のカーブとかにある反射板のようなサイズ感(まわりの風景が広大だから小さく見えている可能性あり)。何もないところで人工物を見つけるとそれ以外に何もなくてももうすぐ街がある?とか気持ちがうきうきしてしまうから不思議だ。それを過ぎるとこれまでにも増してまっ平らで何もない感になった。遠くにも山や丘のような起伏がまったく見えない。(後日談。このあたりで北極海に出たらしい)

太陽が地平線すれすれになると雪原がピンク色になる。夜のうち、あと数時間でフィニッシュするためアイスロードを見るのはこれで最後(正確には帰りに車で同じ道を通るが)。ここまで見たかった景色を見てこれて本当に来てよかったなと思う。しかも来年からアイスロードはなくなってしまうという最後の年に全コースたどれたのは良かった。この景色がなくなってしまうのは寂しい。ピンク色の景色の中を進んでいるとドローンが飛んできて私を撮影している(笑)取材チームが近くにいるようだ。完全に日が沈んで最後の夜。制限時間的にも問題はなく午前4時くらいにタクトヤクタックにフィニッシュできるだろう。遠くに明らかに人工の明かりが見えるようになった。横一列に光が見えて左から右へ動いているように見えるのだが気のせいだろうか。橋の上を車の列が通行しているように見えている。街の明かりが見えたことで自然に急ぎ足になる。

<3月18日>
このあたりもアイスロードだがこれまでと違いひび割れが大きく、ときどき足がはまって転びそうになったりソリのタイヤが落ちたりする。空にはオーロラ。まっ暗なアイスロードを進んでいると、地面のタイヤ跡、氷のひび割れ、道の曲がり具合(道が交差しているように見えたところもあったが一本道のはず)同じ場所を何度も通っているような気がして「自分はもしかして同じ場所をぐるぐるしているのか?」という錯覚に陥る。前方に見えている街明かりも見え方はまったく変わらず。本当に街の明かりを見ているのか信じられなくなってくる。GPSを確認するとあと10kmちょっとのはず。

なんとなく視界が狭くなったように感じ、手が冷たく痛くなってきた。ダウンミトンも着けはじめのような暖かさは感じないので水分を吸わせてしまったか自分の発熱が落ちているのか。あと少しと思ってやるべきことがおろそかになるとバランスが崩れて低体温になる恐れもあるため、立ち止まってエネルギー補給、水分補給、それからカイロを2つ用意し手を温められるようにする。あとフィニッシュまで3時間足らずに迫って低体温とかになったら最悪過ぎるので最後まで気を抜かないこと。


光の列は消えて建物らしい影の形が浮かび上がってきた。本当に到着したらしい!建物がはっきり目の前に見えてきてゆっくり走る車が現れた。大会スタッフの車がフィニッシュラインまで先導してくれる。3年分の重みを感じながら、何が何でも完走とこれまで走ってきて、フィニッシュに来たら泣くかと思っていたが、いざ来てみるとそんなことはなく「うわー、ほんとうに北極海まで来ちゃったよ!」(ただしいまいち実感なし)という感じだった。ただ最後の一歩一歩を味わうように歩いた。最後に少し下りがあったので小走りに。道の先のほうで出迎えてくれる人たちが見えてきた。大会の横断幕が広げられている場所にフィニッシュ。やりきった!という気持ちよさと、もう極寒レースをクリアしたのでやらなくてもいいんだという呪縛から解き放たれた解放感!フィニッシュの時間は4時32分。制限時間まであと4時間30分を残してのフィニッシュ。ぎりぎりとも言う。ちなみに予定に対して1時間7分遅れ、予定に時差は加味していなかったので実質は予定よりも53分早くフィニッシュした。レース中通しておおよそ予定(見積もり)通りに行ったのは偶然かもしれないがよくまとまったと思う。

レース結果:566km完走、185時間32分、6位(17人中7人完走)
           http://www.6633ultra.com/images/pdfs/6633-Results-2017.pdf
           ※私より前にいたのに途中でやめてしまった人が何人かいるのが気になる
    このレースは今回9回目の開催で350マイルは9回で103人が出走し32人が完走しています。

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なぜか砂漠にひかれサハラ・アタカマ・ゴビ・南極でおこなわれたレースに出場。これからも世界の絶景を見に行きたい。
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