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<3月15日>
使ってよい部屋に案内されると相部屋でもう一人先に入っていた。前のCPでも自分が到着したときに出発の準備をしていた選手。自分よりも3~4時間前にいる感じ。ドロップバッグは隣の部屋に置かれていたので(指示はなかったので勝手に部屋を覗いて探した)回収して食料とウエアの入れ替えだけしておく。シャワーを浴びて、食事をして、れなっちに電話報告して、16時30分ごろ就寝。20時30分ごろまで4時間ほど眠れた。また食事をしてエネルギーを詰め込み、準備をして21時40分に出発。ここからフィニッシュまではこれまで温存してきた装備も使い切っていい。装備も体力も総力戦で行く。

予定では10時25分イヌビック着でイヌビックおよび次の区間に休憩時間12時間を割り振っていたため、イヌビック21時40分出発の時点で休憩時間の持ちタイムをほとんど使いきった状態にあった。次のスイミングポイントまでの113kmを休憩なしで行ってようやく予定通りに戻る計算。ただこれを達成できれば最後の区間はかなり余裕がある状態になる。最後の区間には完走確実と言える制限時間の24時間前に出たいので(3月17日の9時)予定通りのタイムに戻れば理想的だが、それができなくても休憩時間を削って9時に出発するようにするつもり。次の区間を完走は確実という状態で迎えたいのでここが勝負である。

コテージから出発したもののコースはどちらに行けばいいのかわからない。するとどこからともなく現れた犬を連れたおじさんが「出て左、まっすぐ行って川に出たら右」と教えてくれた。たぶんスタッフ?レースの協力者か?それにしてもすでにコース上に残っている選手は10名以下になっていると思われ、おそらく選手よりもスタッフの人数のほうが多くなっている気がする。22時近いとはいえまだ薄明るい。ノースウエスト準州の時間+サマータイムになって時計が2時間進んでから妙に夜遅くまで明るくなった。その代り朝は7時、8時になってようやく明るくなってくる感じだけれど。


アイスロードに入り右側にイヌビックの街明かりを見ながら進む。少しでも次の区間に余裕を残せるように、この区間で少しくらいならビバークしても大丈夫なように走りを入れていく。5分走って5分歩くを繰り返して1時間で何キロ進むか測ってみたところ5.8km/hくらい。意外と進まない。全歩きだと4km/hくらいなのでがんばっている割には大して変わらないともいえる。3時間繰り返せば1時間分巻けるという感じか。とりあえず3時間は5分走って5分歩くを繰り返すことにする。補給などで足を止めた後は10分走りで。攻める気持ちを前面に!

アイスロードはかなり幅が広く走るラインを自由に選べる。原則として選手は左側を走ることになっているのだがアイスロードは片側3車線くらいの幅がある。左のほうは氷の上にしっかり雪が乗っている感じで右のほうはつるつるの氷になっている。どちら向きに走る車も右のほうのつるつるのところを走っているようだ。みんな右側を走るからそこの雪が剥げてつるつるになっているんだろうけど。ソリを引いて走るには雪がついて凸凹しているとソリのタイヤの回転に抵抗が出る。つるつるのところを走ると足が滑って蹴る力がロスしてしまう。そこでちょうど真ん中辺の氷の上にわずかに雪がこびりついているところが都合がいい。グリップしつつタイヤの抵抗は感じない。しかしど真ん中を走っていると対向車が来た時が恐ろしい。たぶんこちらも向こうも「あいつは道のどの辺にいてどっちに避けるんだ?」と思っているはず。そもそも向こうは夜中にアイスロードの真ん中に歩行者がいると思っていないだろうけど。そして時速100kmで車のライトが近づいてくる!


<3月16日>
3時間経過後は体と相談しながら、ずっと時計をチェックしているのも大変なので適当に走りを入れる。それでもだんだん歩きが多くなってきた。明け方にスコット選手を抜かした。ビバークをしていたのか出発の準備をしている。この後、夕方までずっと抜きつ抜かれつを繰り返すことになる。夜の間はあまりはっきり見えていなかったアイスロードだが明るくなり北へ進むほど透き通った氷の道という感じになってきた。まさに見たかったそして歩きたかった風景。後ろから大会スタッフの車が来たと思ったら松村さんが車から降りて撮影している。リタイアしても大会スタッフと一緒に観光っぽく移動して楽しめているようだった。写真を撮って遊んでいたらマーティンに「ヒデチカ、急げ!」と言われてしまった。


北に進めば進むほど近くに見えている山(丘?)の高さが小さくなり海が近くなっている雰囲気。日の高いうちに(北極なので低いけど)アイスロードの写真を撮りまくった後は進むことに集中。足を止めるとすぐに追い抜かれて先行していたスコット選手も長い直線で後ろを振り返っても姿が見えなくなった。向かいから走ってきた車が一度通り過ぎて戻ってきた。「樺澤さんですよね?」と声をかけられる。2年前に櫛田さんの車で会った写真家の谷角さんだった。谷角さんは世界的に有名なオーロラ写真の先生だそうでホワイトホースの本屋にも写真集が置かれているほど。櫛田さんの車で出会った日に谷角さんが撮影したオーロラの写真を購入させてもらって自宅のリビングに飾ってある。で、実は同じ歳(笑)「今年は完走できそうですよ」と言葉を交わして別れる。太陽もだいぶ低くなり次のCPへの残りの距離も30km程度に。


昼から夜への切り替わりはウェアを追加で着たり(DASパーカー、DASパンツを上に着る)、ソックスが湿っていれば履き替えたり、明るいうちにお湯を使う食事を済ませて必要な行動食を手元のバッグに補充したりやることが多い。手袋を外してまとめておこなうと手が冷え切ってしまうため、作業して行動して温めての繰り返しをしながら夜を迎える準備が整っていく。暗くなるとさすがに眠気が押し寄せてきた。頭の中も「次のCPはまだ見えないのか?」でいっぱいになってしまう。ふと足元を見ると建設現場か資材置き場のように金属のパイプとも角材とも見えるような長いものがごろごろと転がっている。なんでこんなものがあるんだ?とまたいで通行するが、しばらくしてこれは氷の下にあるものが浮かび上がって見えているのでは?と思い、またがずに踏みつけてみると平らな氷の感触。昼間は透明な氷にしか見えなかったのに夜になると川の中にあるものが浮かび上がって見えるなんて不思議だなーと写真を撮る(この写真をレポート書きながら確認してまたびっくり。普通のアイスロードが写っていて正体を見たと思っていたものもまだ幻覚だった)。細い木の枝に見えるものは氷のひび割れだった。

<3月17日>
真っ暗な中前方に明かりを見つけた。車が来たかなと思ったが動いてはいない。もしかしたらCPの明かりかもしれない。あと少しだと力を入れるが明かりは近づかないまま力はだんだん抜けていく。平衡感覚がなくなって幅の広いアイスロードのどの辺を自分が歩いているのかわからない。原則左側を通らなければいけないのに右に曲がっていってしまうようでアイスロードの右側の除雪の壁に何度か突っ込んだ。暗くなってからは一般の車はこなくなったけどこんな状態で車が来たらひかれてしまう。だんだん自分がしっかり立って歩いているのか、這うように進んでいるのかもわからなくなった。ただ前方の明かりは大きくなっている。なぜか荒川の土手の上のようなところを進み(実際はもちろんまっ平らなアイスロードだが、感覚が荒川のかつてのジョギングコースに飛んだ)明かりの目の前に出てきた。ところが今度は自分が進むと明かりは同じスピードで後退する。この状況をどこかでこれは幻覚だからしぶとく進み続ければOKと判断している自分もいて、後退する明かりを捕まえるように足を前に出し続ける。石段をいくつか上がって鳥居をくぐると(すべて幻覚ですw)ふっと明かりの目の前に出た。大会運営のトレーラーだった。スイミングポイント到着2時。28時間連続行動で予定よりも40分早く到着。フィニッシュ関門まであと31時間で残り75km。完走は確実になった。

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なぜか砂漠にひかれサハラ・アタカマ・ゴビ・南極でおこなわれたレースに出場。これからも世界の絶景を見に行きたい。
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