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目が覚めると明るくなっていた。ちょっと寝すぎたかもしれない。寝ている途中で他の選手が通過していく気配を感じていたので、おそらく途中でビバークした大多数の選手は先に行ってしまっただろう。ビビーから体を引きはがし上半身だけ外に出てタオルで体を拭く。シェルター内の気温はマイナス10度。このくらいだから裸で寝て汗を拭いてウェアを着れるけど気温がマイナス40度になったらシェルター内はおそらくマイナス30度となり、そのような気温で同じことができると思えない。ビバークを撤収し出発は9時40分。思った以上に時間を費やしている。6時間の滞在で睡眠時間は4時間程度。気温はマイナス19度だった。

前回リタイアしたときはここはCP2の15km手前、スノーモービルで運ばれた感じだと下りが多かったと記憶しているので3時間くらいで行けるかなと思っていた。しかし登りが多い。しっかり山を登っている感じ。さらに15km進んでも到着する気配がない。GPSで道を間違えていないか確認すると直線距離でまだ4km離れている。CP1が大会公式だと42kmになっているが実際は35kmだったので、CP2は大会公式で95kmなのでGPSの88kmくらいで到着すると考えていたが(この計算だと前回リタイア時に聞いたCP2の15km手前で計算が合う)CP2は本当に95kmになるらしい。大会公式のCP1とCP2の区間距離が間違えている(60kmある)ということになる。

14時15分にCP2のDog Grave Lakeに到着。ずいぶん時間がかかってしまった。もしかしたら今日中にブレイバーンまで行けるかなと期待していたが完全に無理。順調に行って明日の明け方かなと思う。遅れの原因はビバークで寝すぎ(これは制限時間にかからなければよく眠れたほうが後半に向けての準備としてはよい)、Dog Grave Lakeが予想よりも7km遠かった(思い込み)である。まあどちらもミスというわけではないので落ち着いて進めばいいのだけど。

事前の主催者情報でCP2では食事の提供ができるかわからない(できない?)から自分で食事は用意するようにとアナウンスされていたが食事の提供はあった。パンとシチュー(具だくさん)とチョコケーキ?。チョコケーキ?はCP1のがまだソリに乗せてある状態だがここでもソリにストック。甘そうなのを食べる気になれない。日の当たるベンチに腰掛け湖を見ながらシチューを食べる。前回リタイアして湖を眺めていたのとは大きな違いだ。幸せである。14時55分にブレイバーンに向けて出発。

気温は暖かくマイナス5度。体調はベイパーバリアの影響で親指がふやけているのと、左膝にときどき痛みが出るのが気になる点。そこでCP2を出て少し歩いてからだがベイパーバリアライナーを外してソックスに汗を吸わせて足を休ませるようにした。ソックスが湿っても十分に替えがあるしブレイバーンに到着すれば次の交換用ソックス一式を置いてある。ブレイバーンまでは55kmあるが時速4~5kmで進みビバークをせず、ブレイバーンの室内で休むようにしたいと考えている。ブレイバーンへのトレイルも去年スノーモービルで運ばれた道。そのときは一直線の平らな道という印象だったが、自分の足で入ってみると全然平らではない。スノーモービルに乗っているときの印象が全然当てにならない。



暗くなるとやっぱり眠気が出てくる。CP2から4時間30分で進んだ距離は15~16kmとペースもなかなか上がらない。めったに他の選手に会わなくなって本当にブレイバーンに向かっているのか不安になる。道の印象も前回スノーモビルのときと違うので余計に不安だ。GPSで確認すると少なくともとんでもない方向には向かっていないが現在地からブレイバーンの地図上での離れ具合を見てうんざりする。GPSをチェックしている間に女性2名男性1名のパーティに抜かされた。夜の独りぼっちは不安にもなるため急いでGPSをしまって目視できる範囲くらいにはいようと後を追う。しかし全然追いつかず振り切られてしまった。しばらく進むと3人パーティは補給タイム。その間にまた前へ出る。しかしこちらが少し足を止めるとすぐに抜かされる。

眠いという自覚はそれほどなく意識はしっかりしているが幻覚(単に見間違い)を見るようになった。倒木に雪がかかっているものがガードレールに、背の低い木が人に見えてくる。そのほかにはずんぐりした木が林業の重機に見えるなど。1本の木とその隙間から見えている向こう側の景色が組み合わさって1つのものに見える高度な幻覚まであった。あまりにはっきり幻覚が見えるので人工物が見えると「あれはこういう形をした木があるはず」とかクイズ感覚になってきた。あるとき前方にトンネルが見えて工事現場を照らす照明が立っていたので「なんでこんな山奥に工事現場が?」と思ったら「Are you Ok?」と話しかけられた。スタッフのスノーモービルが目の前にいた。スノーモービルの車体がトンネルに、ヘッドライトが工事現場の照明に見えていた。

22時でトータル120km、ブレイバーンまであと30kmちょっととなる。30kmというと近く感じるが時速4kmで7時間もかかる道のりだ。このあたりからトレイルの脇でビバークしている選手を抜かすようになる。やっぱりみんな寝るのは早め。23時30分ごろ何度か出会った3人組がビバーク準備をしているのを抜かす。気温はマイナス19度と前夜に続きなかなかの冷え込み。少し風があって寒い。この時点でCP3まで25km程度。前夜のパターンだと自分が行けるところまで行って力尽きて寝ている間に早めにビバークした選手たちがまた先に行く形になるが、なんとか途中のビバークを省きCP3の建物の中で寝るようにできれば、このサイクルを抜け出し1つ前の集団に出れるのではないかと考えていた。

午前2時。CP3まで18kmを残しビバーク体制に入る。気温と風のせいかハンガーノック気味か体が冷え切ってしまったため食事&睡眠でリセットしたいと考えた。またトレイル上でビバークしてはいけないのだが、このあたりはトレイル脇になかなか広くなっている場所が見つからなかったがスノーモービルがUターンした轍を見つけ、次にビバーク可能な場所がいつ見つかるかわからないので轍(圧雪)を利用してビバークすることに決めた。シューズを脱ぐときにシューズが固く凍っていることに気が付く。やっぱりベイパーバリア外すと自分の汗で凍るんだな。前夜と同様にウェアを脱いでシュラフの中に入れたビビーサックに入る。これも前夜と同じくサランラップで巻かれたように身動きできなくなる(笑)さらに悪いことに地面の圧雪が弱く体重でつぶれて傾いてきてシュラフがマットから落ちてしまった。それでもビビーでサランラップ巻きになっているので寝ている位置の修正もできない。しばらくもがいたあとこんなことではまったく休まらないので出発することにする。3時間ほど無駄にして余分に疲れるという結果になった。

朝が近づいて強烈に眠くなってくる。右にふらふら左にふらふらで道幅は5~6mはあるのに左右の木にぶつかりそうになるほど。こんなときは目覚ましにGoproに向かって自撮りで話をする。気温はマイナス14度になっていてユーコンとしては寒くはない。しかし現在の服装は去年マイナス40度で行動していたときと同じもの。それでも少し肌寒く感じるくらい。1日目の体力が充実しているときならマイナス40度でも意外と平気だったとか言っていられるけど、疲れているときにマイナス40度をくらったら死にそうです。

午前8時。明るくなれば眠気もなくなるはずと思って耐えていたが、明るくなってきても眠くて体が動かない。そこで最後の手段で自宅(れなっち)に電話する。日本は夜中の1時だが緊急事態ゆえ・・・。れなっちとふらふらしてだめだとかビビーサックのサランラップ巻きの話とかしたら目が覚めてきた。300マイルの選手たちのボリュームゾーンはどこにいるか聞くとみんなCP3ブレイバーンに固まっているという。ブレイバーンまであと10kmだがこのところ時速3km出ているかどうかくらい。とりあえず目が覚めて残りはしっかりした足取りでブレイバーンまで行くことができた。CP手前のブレイバーン湖で写真を撮って少し遊び向こう岸へ出る。ここでも去年のスノーモビルでは湖から上がったらすぐという感じだったが、歩くとそこそこ時間がかかった。11時6分にCP3に到着。

CP3はブレイバーンロッジでアラスカハイウェイ沿いのドライブイン。お店が普通に営業していて自分で食事を注文できる。1人1品大会参加費に含まれている。おそらく去年リタイアして輸送された後も食べたチーズバーガーを注文。それとコーラ。これを自分の足で来て食べたかったというのが今回の目標の第一段階。これまた幸せである。大きすぎて食べきれないためパンの部分は残して中身は全部食べる。取材の岡部さん、杉本さんとおしゃべりしてリラックスできた。続いて睡眠。ここではドライブインレストランの裏に簡易宿泊施設がありベッドで寝ることができる(マットの上にシュラフで寝る)。そのため本当はここまで一気に来てベッドで寝れるのが理想なのだ。夜のビバークでは眠れなかったためしっかり寝たいが、夜出発になってしまうとそれはそれで嫌なので17時には出発したい。そこで16時になって出てこなかったら声をかけてもらえるように杉本さんにお願いし13時に就寝。
 

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なぜか砂漠にひかれサハラ・アタカマ・ゴビ・南極でおこなわれたレースに出場。これからも世界の絶景を見に行きたい。
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