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<3月12日>
到着して順位を確認すると後ろにはあと2人いる程度。よいペースなのに後ろが2人とは若干ショックだが前もそんなに離れているわけではない。順位を気にしてというよりは最後尾は避けたいというだけなので。あとはリタイアもけっこう出ている。また過去の結果を見るとフォートマクファーソンを通過した人の完走率はかなりいいので(落ちる人はここまでに落ちる)第一関門突破という感じ。

ドロップバッグを受け取りウエアと食料の入れ替え。ベイパーバリア用の手袋を2重で使っていたら枚数が足りないことに気が付く。ビニール手袋は残り2セット。最後のアイスロードに温存するためイヌビックまで手袋のベイパーバリアなしで行くことにする。スタート時に背負っていたザックは使いにくくて途中からソリに積んでしまっていたためドロップバッグに置いていくことにする。ザックを背負っていると、ソリのハーネスと2重に背負っている状態になるため、歩く(走る)ときに肩周りの動きが制限されて疲れる。それよりは自分の体に装着しているものをソリのハーネスだけにしたほうが着脱も速くなるのでウェアの調整やお湯を使うときに都度ハーネスを外してソリにアクセスすることにしてもマイナスにはならないと思った。あとはソリのハーネスも常にショルダーベルトまで付ける必要はなく続けて作業することが見込まれる場合は腰ベルトだけで引いても問題ないことがわかった。元から腰ベルトだけのハーネスを使っている選手も多いくらい。最初の予定ではウェアの下にハイドレーションを背負うことを検討していて、それを入れたら3重になってしまうからあり得なかったな。

足の裏を確認すると右足のかかと内側に水ぶくれあり。水だけ抜いて睡眠を取りながら乾かすことにする。取材チームの人にメディカルに見せないんですかと聞かれたが「見せません。水ぶくれのことは内緒ですよ」と口止め。専門家に見せると自分の分野の問題になんとか当てはめようとする(医者なら病名をつけたがる)ので大したことがないときは絶対に見せないほうがいい。ここで何もなくても先々足の裏はどうなった?見せてみろとことあるごとに時間を取られるのは目に見えている。水ぶくれやマメを進行させないようにできるだけベイパーバリアを使わないこと、靴下を毎日交換することを心がけていく。れなっちに電話をかけて到着の連絡をし、体育館のようなところで就寝。

2時間半で目が覚めたので出発の準備。滞在5時間。23時4分に出発。ソリを引いて町の入口に向かって歩いていると近くの家の人が声援を送ってくれたりする。再びデンプスターハイウェイへ。フォートマクファーソンの町明かりを後にまっくらな道を突き進む。やっぱり人工の光から離れていくのはちょっと寂しい。いいペースで進んでいると前の選手に追いついた。停止してコーヒーを飲んでいる。「コーヒーいるか?」と勧められたが、がしがし進んでいたので「No, thank you」。後からちょっとくらい足を止めてもよかったかなと思った。


<3月13日>
しばらくの間ずっと平ら。遠くのほうに赤い光が見える。あれは何かな?と思ってみながら進むが全然近くならない。数時間かかっただろうかようやく近づいてきたと思ったらちょっとした山の上に電波塔がそびえている。そのあたりから平らな道ではなく軽いアップダウンのある尾根っぽい道になった。それなりの斜面を登って電波塔の脇を通過。電波塔へアクセスする道の分岐がビバークをするのによさそうな場所だったが特に眠くなかったので通過。しかしどこかでは睡眠を取らないといけないだろう。意外と見上げるような登りが多く感じ、しかしこの区間の累積標高差は300mないので標高差の情報が間違えているのではないかと思い、GPSで一つの坂道の標高差を測ったら12mしかなくてショック。

眠いタイミングがやってきたがビバークできそうな場所がない。尾根の上の道で路肩も広くなく落ち込んでいる。さらに風の通り道になっている。いくら進んでも良い場所は見つかりそうになかったため道が右にカーブしているところの内側で寝ることにした。道が少しだけバンクしているので左から吹いている風を少しは防いでくれるだろう。後の様子をうかがい誰もいないことを確認して素早く準備。誰か来ていると大丈夫かとか話しかけられたりして、眠気が飛んでしまうことがあったりするので確認してからビバークに入る。特に英語が苦手だから話しかけられて英語を考えると目が覚めてしまうので。シュラフをばさばさと広げていると走ってきた車が目の前で急停車。最悪である。取材チームの車だった。「誰もいないことを確認してビバークしているのに、いいタイミングで来ましたね」とか言ってしまう(悪意はないです、眠くていっぱいいっぱいなんで!)。何か聞かれて説明しながらシュラフにもぐりこんだ気がする。無事にビバークすることができた。1時間程度寝て明るくなりはじめた道を進む。


終盤はやっぱり足のむくみで痛い。やっとツィーゲーチックが見えてそこまでは下りなのに小走りすらできない。この先のことを考えると少し気が重くなってしまう。レース後半のアイスロードはある程度走れればという希望も持っているがこの痛み、この足の重さでは厳しい。マッケンジーリバーを渡るところで前の選手が迷っている。川の上をよくよく見ればツィーゲーチックを一度後ろに見るような方向に凍った川の上を進んでから右に曲がる道があるのに、そっちに行くとツィーゲーチックを通り過ぎてしまうと思っているらしい。思い切ってあと少し進めば看板も見えているのに。うまく説明できないので行動で示そうと選手を無視して進む。前にいた選手は通りすがりの車を捕まえてツィーゲーチックへの行き方を聞いている。そしてやっぱりこのまま川に進めばよいとのことだった。少し進んで分岐に来るとそこに大会スタッフの車がいてフォートマクファーソンのときと同様に後ろについてくるようにとのこと。ツィーゲーチックは小さな集落という感じ。こんな場所に人が住んでいるのが驚きで何を生活の糧にしているんだろう。家とかの見た目は普通だし教会があったり公園?(遊具のようなものが見えたが気のせいか?)があったりする。ツィーゲーチック到着14:35、予定より40分遅れ。
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なぜか砂漠にひかれサハラ・アタカマ・ゴビ・南極でおこなわれたレースに出場。これからも世界の絶景を見に行きたい。
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