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ゴビ・マーチ2011のレポートをまとめました。あとからブログではなくHPコンテンツ化する予定です。ブログ版はとりあえずです。素晴らしい経験を共有し、新しい挑戦者が生まれることを願っています。
★6/22(水)ゴビ・マーチ出発前夜
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/193/
★6/23(木)ウルムチへ
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/194/
★6/24(金)ウルムチ観光
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/195/
★6/25(土)ブリーフィング・装備チェック
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/197/
★6/26(日)ステージ1 Tian Shan Mountains 34.6km
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/190/
★6/27(月)ステージ2 In The Footsteps of the Kazaks 19km(悪天候のため短縮)
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/191/
★6/28(火)ステージ3 Water in the Gobi Desert 44.5km
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/192/
★6/29(水)ステージ4 Into the Dunes 37.3km
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/199/
★6/30(木)ステージ5 The Long March along the Silk Road 80.8km
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/198/
★7/ 1(金)ロングステージ2日目・・・キャンプ地待機
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/189/
★7/ 2(土)ステージ6 最終日
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/200/
★7/ 3(日)帰国
http://adventure1973.blog.shinobi.jp/Entry/201/
■総合
エントリー:152人
出走者 :148人
順位 :13位
■ステージ別
ステージ1、34.6km、 5:14:00、14位
ステージ2、19km、 1:47:24、11位 (悪天候のため短縮)
ステージ3、44.5km、 5:12:56、10位
ステージ4、37.3km、 6:49:34、18位
ステージ5、80.8km、15:35:15、22位
ステージ6、14km、 1:35:56、10位
■その他
レーシング・ザ・プラネット ゴビ・マーチのHP
http://www.4deserts.com/gobimarch/
私の装備表など
http://www.adventure-runner.com/desert/gobi/doc/gobi_equipment_2011.pdf
パオロのHP(イタリアのトップアスリート?)
http://www.paolobarghini.com/
朝6時に起床。今日は7時にはホテルを出発し空港に向かわなければいけない。朝食を食べにロビーに降りると成宮さんが先に食事していた。成宮さんは自分たちよりももう少し早く出発する。食事を済ませてからチェックアウトしロビーで栗原くんが来るのを待っているとパオロもこれから出発するようでロビーに来ていた。軽く挨拶して握手を交わす。次の再会はあるんだろうか?それからタンさんも出発のためロビーにいた。こんなに早く出発する人は少なくロビーに人影もまばらな中で最後に2人に会うことができてよかった。ぱらぱらと帰っていく選手達を見ると「終わったんだな」と少し寂しい気分になる。
栗原くんが来てホテルを出発。タクシーに乗ってウルムチ空港へ。30分程度で空港到着。栗原くんはまだ航空券を取っていないのでカウンターで自分や小野さんが乗っていく便を取ろうとしている。栗原くんを待つ間空港の中を見て回る。土産物屋も見たがいまいちかなー。ラクダ肉だけ購入(ランフィールド夏合宿差し入れ用)。栗原くんの航空券も問題なく取れてチェックイン。搭乗口に行ってから待っている間にお店を見る。あまりいろいろな店はなく何か所かに店があっても商品が同じなので見る場所は限られる。ウイグル民族音楽CDが何種類か売られていたがその中の1つがアイドルユニットみたいになっていたので面白いかもと思って購入。パッケージはアイドルCDな感じだけど中身はウイグル民族音楽です。
飛行機で北京へ移動。事件もネタもなくすんなり北京に到着。乗り換え時間が1時間ほどしかない小野さんは急いで次の便へ。小野さんはこの乗り換えのために全ての荷物を手荷物として機内持ち込みにしていた。自分と栗原くんはゆっくりできるためのんびり移動。北京空港はすごく広いので電車に乗って別のターミナルへ移動。出発ターミナルまで行ってから別行動。お土産購入のためにお店をまわる。いまいち面白そうなものはなかったがエジプト・アタカマでマグカップを買って帰ってきているのでお茶のカップ?を購入。
搭乗時間が近づいたので出発ゲートに行き栗原くんと合流。飛行機まではここからさらにバスに乗っていくらしい。北京空港広いなー。成田行きを待つ人の列に砂漠レースのワッペンを付けた外国人選手がいた。日本に住んでいる外国人選手の参加も3人くらいあったようなので、その人達だろう。フライトは少し遅れて出発。飛行機の中で隣の人に「どちらに行って来たんですか?」と話しかけられたので、そこから壮大な話が始まる(笑)「ウルムチに行ってきました」から当然何しに行ったのかという話になるので・・・。
成田の到着ゲートを出たところで栗原くんと一度別れたが電車で再び一緒になった。夜遅くに帰宅。昨日まで砂漠にいたのに、あまりにも早く社会復帰。明日から仕事できるのか謎。
■総合
エントリー:152人
出走者 :148人
順位 :13位
■ステージ別
ステージ1、34.6km、 5:14:00、14位
ステージ2、19km、 1:47:24、11位 (悪天候のため短縮)
ステージ3、44.5km、 5:12:56、10位
ステージ4、37.3km、 6:49:34、18位
ステージ5、80.8km、15:35:15、22位
ステージ6、14km、 1:35:56、10位
夜中、風の音で目が覚めた。「なんか風が強くなったな」と思っていると、あっという間に砂嵐になった。テントは日中の暑さのため入口も窓も全開。入口を閉めるためテントの外に飛び出す。テントの入口の布を屋根のほうにまくって安全ピンで留めてしまったため手間がかかる。さらに砂が舞い上がって少ししか目を開けていられないため作業も時間がかかる。入口の布を落としてから窓を塞ぎにテントの横へ回り込む。窓になっている布を縛ってある紐を解いて完了。テントの中へ戻り内側から入口の布を紐で縛っていると外に飛び出していたテントメイトが隙間から飛び込んできた(笑)すべての入口と窓を塞いでも強風が吹き込んできてテントの中まで砂嵐。現地人のキャンプ設営スタッフ達も大騒ぎでテント周辺に集まってきて杭を打ち込んでいる音がしている。地面にしっかり固定しないとテントが飛ばされてしまいそうだ。自分たちでできることがなくなったので寝ようとするが砂埃で口や喉がからからですごい不快感。時計を見ると深夜1時を回ったところ。なかなか寝付けず長い夜になった。
朝起きると何もかもが砂まみれ。せっかく昨日はシャツを洗ったりして少しでも爽やかな最終日を迎えようとしたのに、すべてが台無しになっていた。今回のレース期間の中で最も汚れている。いや今までの砂漠レースすべての中で最も汚れていると思う。みんな砂を少しでも落とそうとウェアやザックを叩いているが、ちょっと払ったくらいではどうにもならないくらいになっている。テントの入口に並んだシューズはもはやただのゴミにしか見えなかった。小野さんが「すごかったですね!」と嬉しそうな顔をしてやってきた。小野さんは何があっても楽しそう。ありえないトラブルが起こるから楽しい砂漠レース。すべてを受け入れるしかない。砂嵐のおかげでテントの周りにさらさらの砂が積もったのでお土産の砂を採取しなおす。
今日は上位36人は9時30分スタート、それ以外の人は8時30分スタートだ。そのため上位にいる自分と小野さんは朝はゆっくりできる。先にスタートする日本人メンバーと写真を撮ってスタートを見送る。それから自分の最終日の準備。少し残った食料も捨ててしまう。今日のコースは14km。どんな風に走ろうか?と考えた。前後の順位の選手は30分ほど離れているため、もう順位の変動はない。のんびり走ってもいいかなとも思うがやっぱり全力で行こうと決める。「1時間先にスタートした日本人選手全員に追いつけないだろうか?」と思いつき目標決定。スタートラインでパオロと写真を撮ってもらいスタート!
最初から先頭集団で飛び出す。前を行くのは1位のデーモンとジミー。3番手を走っていると韓国のホンが隣に出てきた。コースは登りになる。デーモン、ジミー、ホンに遅れる。やっぱり上位陣は強い。しかしその後の下りと平地で再び追いつき少し急な登りでデーモンとジミーを抜かす。先頭がホンで自分は2番手。登りで差をつけられたが、登りきってコースが道を外れて左に曲がるところでホンは道を走ってまっすぐ行ってしまった。声が届くくらいの差であれば大声を出して知らせるのだが自分が登りきったときにはホンの姿は見えず。少しだけ「ラッキー♪」と思う。もしかしたら1位ゴールも不可能ではないかもしれないぞ。岩の隙間のような場所を下っていく1時間前にスタートした選手の最後尾に追いついた。スピードに乗って爆走。少しするとフラッグを見かけないことに気がついた。足元を見ると割と固い地面で自分の足跡もほとんど残っていないが・・・。しかしかすかにではあるが足跡はつくので地面をよく見る。自分以外の足跡がない!自分の前を100人ほど進んでいるのに足跡がないなんてありえない。急いで元来たコースを登り返す。途中で分岐があった!5分ほどロスしたか。正規のコースに復帰すると、また1時間前スタートの最後尾を抜かす(笑)はるか前方をホンがすごい勢いで走っていくのが見える。今自分は何番手くらいなんだろう?
1時間前スタートの選手を次々と抜かしていくと、美絵さんと長谷川さんに追いついた。「先に何人くらい行ってます?」と聞くと「7人くらい?」とのこと。やっぱりだいぶ行かれちゃったなー。何番でもやることは全力で走るだけなので加速していくと後ろから「行けー!日本の誇りー!」と声が飛ぶ。普段なら恥ずかしいけど砂漠レースならそういうのもありだなーと嬉しく思う。ホンはすっかり姿が見えなくなってしまい追いつくのは先スタートの選手ばかり。ユーさんがいたので「ミスコースしちゃいましたー」と声をかけて抜かしていく。崖のような場所に出たが、そのままの勢いで崖にダイブ。スキーのショートターンのようにシューズのエッジでブレーキをかけながら駆け下る。反対側の登りに取り付いて振り返ると後ろから突入した選手が滑落しているのが見えた。
コースは緩やかな登りが続き、順位が決まっていること、前後に上位の選手が見当たらないことから若干ペース落ち気味。時々抜かす下位の選手と声を掛け合いながら走っていく。そろそろ成宮さん、栗原くんあたりに追いつかないかなーと思うが日本人選手には追いつかない。さすがに14kmで1時間差は厳しいか。最後にがつっと登った後ゴールに向かって下り。スタッフに「あと2km」と声を掛けられる。下りを爆走していると成宮さん発見。さらに下って岩の角を曲がるとラクダが!(野良ではない)崖の隙間でコースが狭いので刺激して蹴られたりしないようにそっと横を通り抜ける。崖の隙間を抜けるとなにやら建物が見える。ゴールだ!舗装路に出る手前で鈴木くんを抜かす。少し舗装路を走り建物が立ち並んでいる敷地に入る。そしてゴール。ずっしり重い完走メダルをかけてもらう。ゴビ完走も嬉しいが、ついに南極レースへの扉が開かれた!栗原くんが「おめでとうございます!」と出迎えてくれた。この場所は火焔山というところで西遊記の舞台でもある。孫悟空の像があり、この場所は中国西部の砂漠地帯でも特に暑い地域らしく案内看板に「中国最熱的地方」と書かれている。
いつものようにゴールには飲み物・食べ物がたくさん。ジュースがうまい!(笑)しかし今回お腹の調子はいまいちなのか固形物に対する食欲がなくフルーツばかり食べる。ゴールまであと少しのところに座って飲み食いしながらみんなのゴールを待つ。みんなのゴールシーンは心温まる雰囲気。この雰囲気をいかに伝えるかというのは難しいというか不可能な気がする。これを感じたければここに来るしかないんだろうな。今日は上位でゴールしたジミーがぐったり横になっていた。握手して写真を撮ってもらったがジミーはかなり具合悪そう。この後ジミーはバスで帰らずスタッフの車に収容されたようだが・・・ジミー速いのにデリケート過ぎるぞ・・・。アリがゴールにやってきたので小野さんと一緒にゴールゲートへアリを迎えに行く。アリは奥さん娘さんに出迎えてもらってとても嬉しそう。アリは次は南極レースに挑戦する予定。南極で再会できるといいな。それからさらにだいぶ時間がたって美絵さん、長谷川さんが一緒にゴールへやってくる。2人で日の丸が書かれた扇子を掲げてゴール!すばらしい演出、やりますなー。
最後に日本人選手みんなでゴールゲートで写真を撮る。全員完走だからこその嬉しさがはじけ飛んでいる写真が撮れた。13時にバスが出るとのこと。ここから3~4時間のバスの旅。シューズのインソール、ゲーターは持ちかえっても捨てるだけなのでゴール地点のゴミ袋に捨ててしまった。シューズもホテルに帰ったら捨てる予定。バスに乗り込むとけっこうクーラーが効いていて快適。タンさんがいたので「どうでした?」と聞くと、指を喉に当ててシュッと横へ切る仕草。ロングステージでリタイアしてしまったようだ。バスが動き出すとタンさんは少し具合が悪いらしく座席から立ち上がりバスの通路へ横になる。そんなところに寝たらますます気持ちが悪くなんじゃないかと思った。
バスはきれいに舗装された道路を通り途中トイレ休憩が1回。少しうとうと眠ったり、ぼーっと外の景色を眺めたりしながら過ごす。レースを回想するとかでもなく、とにかくぼーっと。ウルムチの街に入ると巨大な広告看板があったりショッピングモールがあったり一気に文明に帰ってきた気分になる。ホテルに戻ったらシャワー浴びておいしいものをたくさん食べようとわくわくしてくる。見覚えのある街並みになってバスはホテルに到着。無事にここに帰ってこれてよかった。バスから次々と砂埃だらけの競技者が降りて来てホテルの中へ。毎回レース後にホテルに帰ってくると「こんなどろどろで(現地では)一流のホテルに入って行っていいのか」と思ってしまう。
レース後の部屋も小野さんと一緒。小野さんはシャワー前にネットで完走の報告をしたいそうなので先にシャワーを使わせてもらう。自分がシャワーを浴びる前に装備をザックから出して、装備にシャワーを浴びせる。とにかくある程度でも砂を落とさないと帰る準備ができない。シャワーで流した装備をバスタオルの上に並べてから自分がシャワーを浴びる。体を洗ったタオルが真っ茶色になっている(笑)おそらく1週間砂漠でレースしたからではなく、この汚れのほとんどは昨夜の砂嵐のせいだと思う。パーティの時間までは2時間程度。外に出るほどの時間もないし、部屋で明日の帰国の準備をしてベッドに寝転がる。少しお腹が空いたのでホテルまでは持って来たけれど砂漠には持っていかなかった食料の残りを食べていると小野さんに「よくそんなの食べれますね」と笑われた。
19時にパーティ会場へ。栗原くんは今日の飛行機で帰ったとか!あわただしいなー。スクリーンを見やすいいいテーブルを日本人選手分の椅子と共に確保。しかし他の日本人選手こないぞー。会場内のテーブルがだいたい埋まり席を確保できていない海外選手が空席っぽく見える日本人席のまわりをうろうろ。まだ来ていない人の席をキープしておくことが困難になり日本人席少し縮小。少ししてみんな揃ったので椅子が足りない分だけ別の場所から持ってきて日本人席を作った。長谷川さんは具合が悪く部屋で寝ているようだ。今回のレースではテントやバスで長谷川さんとご一緒して話をする機会が多かっただけにパーティで乾杯できないのは残念すぎる。しばらく食事して(でもやっぱりここのホテルの食事は悪くはないけど個人的にいまいちかなー)それから表彰式。優勝のデーモンはぶっちぎりの強さだったが、普通の服装で見ると・・・「普通のおっさんだよね」と小野さんと話していました。パオロ先生は3位。パオロが優勝した2009年エジプトではちょこちょこ一緒に走る場面もあったのだが今回は影すら踏めず。それから大会オフィシャルカメラマンが撮影した写真スライドショーを見た。会場で韓国の人がテグの世界陸上の応援メッセージ?を募集していました。
自分は次に砂漠レースに来るのは1年半後の南極で、しばらくこういう場に来ないので「サマンサと写真撮ってもらおう」と思いサマンサを探す。サマンサを見つけたが何人かの選手と難しそうな顔をして何か話している。競技上のクレームか何かあったのだろうか。しばらく様子を見たがいつまでも何か話し合っているのであきらめ。話が終わるとサマンサはどこかに行ってしまった。鈴木くんがタイミングチップを返却できていなかったので、アリーナが回収していたことを伝え一緒にアリーナのところへ。アリーナとも写真撮ってもらおうと思いアリーナと写真撮影。アリーナに「次はいつ会える」と聞かれたので「来年、南極!」と宣言しておいた。アリーナの反応からすると南極の出場枠はまだ空いている感じだ。よしよし・・・帰ったらすぐエントリーするぞ。
パーティ会場を出て、日本人選手でホテルの喫茶店でささやかに打ち上げ。なんと今日の飛行機で帰ったはずの栗原くんが戻ってきていた。途中でタクシーが故障して飛行機に間に合わなかったんだそうな・・・。小野さんが長谷川さんに電話したがまだ具合が悪いらしい。美絵さんは明日1日ウルムチ観光するので「地球の歩き方」を貸してほしいとのことで「地球の歩き方」を渡しておく。その他のメンバーは明日帰国するようだ。朝は自分、小野さん、栗原くんが一緒に出発する予定。部屋に帰ってから寝る前に小野さんが大会HPを見ていたので「デーモンって何歳なんだろうね」と選手リストを見ると37歳!?あの風貌で同じ歳かーと衝撃を受けた。なぜか今回はのんびり想いにふけることもなくどたばたと時間が過ぎて行く。楽しさはいつもと変わらずだけど。
3時に起きて朝食と荷造り。今日は3時間ほどバスで移動した後すぐにスタートする。お湯はスタート直前にはなく、ここで3時から4時までしかもらえないためお湯を使う朝食の場合はスタートまでかなり時間があるがここで食べて行かなければいけない。4時にバスに乗り込んで出発。山岳地帯からマイナス標高のトルファンへ。気温も一気に上がるはずだが今日のコースには砂丘があるので楽しみ。
バスは山道を下っていく。遠くの方に街の明かりが見えるがあれがトルファンだろうか。山道を下り切ると高速道路のような道に入りバスはスピードを上げていく。しばらくうとうと眠っているとバスが停止。トイレ休憩か?と思ったがどうも様子がおかしい。外に出てみると自分の乗っている3号車がタイヤ交換中。何かトラブルがあったようだ。今までの4Desertsのレースでは、エジプトではバスのエンジンが煙を吐いて動かなくなり、アタカマではバスが川にはまったのをみんなで押して脱出し、とバスで必ずトラブルが起きている。「またかー(笑)」とタイヤを交換する様子を写真に撮って楽しむ。かなり長い時間かかってタイヤ交換が終了し再び移動開始。
スタート地点に到着したのは8時ちょっと前。ほんとうは7時到着、8時スタートの予定だったので、スタート時間は何時になるのだろうと気がかり。とりあえずいつスタートされてもいいようにスタート後でも動きながらできるようなことは後回しにして最低限の準備を済ませる。すると8時ちょっと過ぎに軽くブリーフィングがおこなわれ、その後唐突にスタートのカウントダウンが始まってスタート。きちんとスタートラインについていなかったがスタート直後に前にいたランナーを抜かして先頭集団に飛び出す。どのように走るかイメージもできていなかったが、とりあえず砂丘を楽しく走って砂丘を抜けたときの体調で後のことを考えよう。
最初から果てしなく広がる砂丘地帯。これぞまさに砂漠!足は取られるし登りは3歩進んで2歩下がるだし、やっぱり大変なのだが、いちばん走りたい場所でもあるのでテンションは上がる。すさまじいほどの大砂丘地帯。これほどの規模はモロッコのメルズーガ砂丘以来だ。というかメルズーガ以上かもしれない。先頭集団からはこぼれて少しずつ抜かされいつもくらいのポジション10番手くらいまで後退。砂丘地帯を走っている自分の写真を撮りたくなったが、10位前後を走っている選手に「シャッター押してください」は言いづらいなあと思った。しかしやっぱり写真を撮りたいので近くを走っている選手にお願いすると快くOKしてくれた。とても楽しく時間を忘れて走ることができ砂丘の終わりが見えて来た時は「40km全部砂丘でいいのに」とか思った。そのくらい素晴らしい光景だった。実際40km続いたら大変なことになると思うが。
10kmほどの砂丘を越えてようやくチェックポイントへ。砂がシューズに入るのを防ぐゲーターはつけていたものの1時間半ほど砂丘を走るとシューズの中には砂がたくさん入る。CP1でシューズと靴下を脱ぎ砂をしっかり落とす。このとき靴下も脱ぐのがポイント。砂はみんな靴下の中に入り足にまとわりついているのでシューズを脱いだだけだとほとんど砂は落ちない。指先の皮膚が少し剥けていたためバンドエイドを貼っておく。この間に何人かがCP1を通過。その中に小野さんもいた。水を持ってきてくれたスタッフが、ザックの背中に付けてある寄せ書きラミネート加工を見て「おー」と言っているので「友達からのメッセージなんだー」と自慢しておいた(なんて言ったら英語で自慢したことになるかわからないが雰囲気でw)。
CP2へは割と平坦な荒地をゆっくり走る。まだ太陽は雲で隠れているし暑くはない。CP2の手前、速歩きで小野さんに追いついた。2人一緒にCP2に到着。気温も上がって少し気持ち悪くなってきたため気分転換に音楽を聴きながら歩くことにする。ウォークマンや食べ物を取り出しているうちに小野さんは行ってしまった。経験の少ない人はチェックポイントで時間を無駄にする印象があるのだが、小野さんは初砂漠というよりはレース経験自体も決して多くはないのにチェックポイントが早い。
速歩きしながら水と塩タブレットを繰り返し摂る。手が浮腫んでいるので手を握ったり開いたりして血行を良くする。しばらく進むと塩タブレットがない!ザックのポケットから出し入れしていたのだが落としてしまったらしい。こまめに摂っていたので、落とした場所からそんなに離れてはいないはずと思い後ろを振り返る。だいたい自分が歩いてきた場所はわかる気がする。しかし真っ平らな地面というわけでもなく塩タブレットの袋を見つけられるかどうかと考えるとちょっと自信がない。客観的に判断すれば不可能に近いのかもしれない。少しどうするか考えたが「とりあえず今日だけでもなんとかゴールにつければ後は明日のロングコースのみ。みんなから少しずつ塩を分けてもらえば1日分くらいはすぐ集まるだろう」と考え先へ進むことに。最悪コーンスープの粉でも舐めて進めばなんとかなるだろう。
急激に気温が上がり「これはちょっとやばい」という状況になってきた。しかし遥か前方に小野さんらしき人影が見える。これは追いつくしかない!足を速めて進むと小野さんは一度道路に出てその先のコースを探している様子。地元警官か何か数人の人影が見えて小野さんを取り囲んで何かしている。一瞬「何かトラブルでもあったのか?」と思ったが集まっていた人影がばらけて向こうに向かって走り出す小野さん。「あー、走らないでー!」と思うがこちらはまだ荒地にいてペースを上げることができない。もう追いつけないかも・・・。一度舗装路に出て警察官のいるところを通りすぎる。
小野さんが走って行った道は車が普通に走れるくらいの土の道。もし追いつけなければ本当にコーンスープでもカップラーメンでも塩分のあるものを口に含みながら進むしかなくなってしまう。幸い現時点では塩分も水も足りているらしく手の浮腫みもすっかり回復している。「仕方ない一か八か全力で追いかけるか!」と判断。追いついて塩タブレットでもスポーツドリンクの粉でも分けてもらえればそこから先は時間をかけてゆっくり進んでもいい。土の道を全力で走る。しばらく進むと再び荒地になったが前方に歩いている小野さんを確認。「そのまま歩いていてくれ!」と願いながらやっと追いつくことができた。
「スポーツドリンクの粉をもらえる?」と聞いて、塩タブレットを落としてしまったことを伝えると小野さんは塩タブレットの予備が丸ごと2袋余っていると言い1袋分けてくれた。助かった・・・。ちょっと命懸ってたな。気温は朝とは打って変わってあり得ない暑さになりつつあった。追いつけなくて塩なしだったら本当にやばかった。昨日までともまるで違う暑さ。小野さんと2人で歩く。ゴールしたら塩タブレットのお礼にビールをおごる約束をする。砂漠での塩の価値に比べたらビールなんて安い。ピンチを切り抜けた安堵感もあって楽しくCP3へ到着。
CP3ではスタッフから「この先コースフラッグがなくなっている場所があるので335度の方角へ進め」と指示があった。またかなり暑くなっているので水を余分に持っていくようにとの指示もあり。ここまでですでに十分暑いのにさらに上を行く暑さになりつつあった。暑いんじゃなくて熱い。小野さんと一緒にコースを探しながら行くことにする。CP3を出てしばらくすると早速フラッグが見当たらない。コンパスを見てだいたい335度方向を探すが、まったくフラッグがなく進むことができない。前に3人のグループがいて335度とは違う方角に進んでいる。その方向を良く見ると3人グループは迷いなく進んでいるように見えたため「コースを見つけているのかも」と思い。振り返って小野さんに「あの集団追いかけますか?」と聞くと小野さんはその方向にフラッグを見つけることができ「ありました!」と指している。スタッフの言っていた335度とまったく方角違いますけど・・・
ピンクフラッグを追いかけ順調にゴールできそうと思われたが、あまりの高温に体が動かなくなってきた。水はお湯になり、カーボショッツは熱くなっている。小野さんの後ろについて行くので精一杯。「これは今日は相当リタイア者が出るな」と小野さんと話をする。ゴールゲートが見えてきて2人で「やった!」と喜びの声を上げるが、予想した行動時間よりも短い。「4Desertのレースはゴールが見えてからが長いから」と言いつつも地形はほぼ平地なので迂回するような場所もなくすぐにゴールできる期待が高まる。しかしピンクフラッグを追いかけて行くと牧草地の柵のような鉄条網に突き当たった。そのまま鉄条網を潜れば20~30m先に道が見えフラッグがゴールに向かって続いている。しかしピンクフラッグは鉄条網を潜るのではなく右に曲がって果てしなく続く鉄条網に沿って”ゴールとは反対方向”に続いている。どこまで続いているのか先が見えない鉄条網を迂回してまたこちらに戻って来るらしい。
「やっぱり・・・」と絶望的な気持ちになりながらも2人で進み続ける。そういえば前にいた3人組がいなくなっている。ショートカットしやがった。さらに後ろにいた2人組の姿も消えている。あいつらもか!。しばらく必死に進むと柵の終わりが見え作業道が柵の中(どちらが中かはわからないが)に入っていく。あとはまっすぐゴールゲートに進むだけ。小野さんに「ゴールしたらショートカットした奴らのことチクッてくださいね」と話す。時間にしたら10~15分程度か?しかし前の3人組は近づいていたし、あのまま全員で迂回コースに入っていたら抜かせたかもしれない。(自分はふらふらだけど)後から聞いた話だが日本人は全員ピンクフラッグに沿って迂回したが海外の選手はショートカットしたようだった。(そしてショートカットした人にペナルティが与えられることもなかった)やっとの想いでゴール。そしてゴールテントに倒れこむ。ふらふらだった割には小野さんに引っ張ってもらったおかげて17位とまずまずのところをキープ。今日は距離にすれば40km弱というごく普通のコースだったが波乱万丈でとても長く感じた。
ゴールテントに倒れこんだまま行動不能に。がんばれば自分のテントには帰れるかもしれないが使える水も限られる場所で倒れているよりも、スタッフやドクターが近くにいる場所で倒れているほうが安全。時々スタッフが頭を持ちあげて水を飲ませてくれる。完全に赤ちゃん状態だ(笑)あまりに自分がぐったり倒れているので、スタッフが顔の上で「名前は?」と大きな声で聞いてくる。名前を言いながらその意味を理解して笑ってしまう。ちゃんと意識ありますよー(笑)気温はさらに上昇。風が吹くと熱風で焦がされているよう。風が吹かないほうが楽というあり得ないことになっている。
しばらくしてからスタッフに両脇を抱えられメディカルテントへ移動。ベッドのようになっているアウトドアチェアに横になる。近くにスプレー(霧吹き)があったので体に霧を吹きかける。これは快適。テントで倒れているよりよっぽどいいや。しかし後からゴールしてくる人が来たら場所を譲らなければいけないと少しは気にしていたが、ほとんど選手は帰ってこない。どういうわけかゴールテントやメディカルではスタッフがいつもに比べると少なくどこかに出かけている様子。メディカルはほぼセルフサービスで選手自身が好きに使っている状態になっていた。
横になっていてときどき動くとベッドの金属フレームに手足が触れてやけどしそうなほど熱い。空には雲もあり日差しが時々遮られる晴れというよりは曇りに近い天気なのにこの暑さはなんなんだろう。いつのまにかジミーがメディカルテントにぶらっとやってきてスプレーをかけてくれていた。小野さんが「大丈夫ですか」とやってきて「何かできることがあればします」と言ってくれたので、あまりに申し訳ないことだが自分の荷物からコーンスープを出してもらいお湯を注いできてもらった。コーンスープを飲んでやっと一息。ようやく「動かなきゃ」という気分になる。ゴールしてから2時間経過していた。一度テントに行ったが自分の荷物をゴールテントやメディカルテントに置き忘れたりしていたので荷物の回収に出かける。ゴールのスタッフは足りていないようで選手がゴールしてきても見ていなかったり、ゴールの太鼓を叩く人がいなかったりしたので、自分が少しの間太鼓をたたいた。ちょっと叩いてみたかったので叩けて嬉しい。
自分のテントに帰り横になって「今日はもしかしたら日本人参加者からもリタイアが出るかもしれない」と思っていると長谷川さんが帰って来た。「ありえ~ん・・・」と倒れこみぐったりしている。あまりの暑さで各CPでは待機・休憩者続出、コース上で行き倒れている人も続出だったらしい。キャンプ地にもだいぶ選手は帰ってきていたがゴールテントが拡張されて野戦病院のように人が倒れている。そんな中、隣のテントから「ちょー簡単だったー♪」と成宮さんの声が聞こえてきた。無事に帰って来たらしいが・・・簡単だった?そんなわけないだろうが、冗談でも元気にそんなことを言えてしまうのが恐ろしい。さすがリタイアするする詐欺だ(毎日のように今日はリタイアすると言っている)。
日本人参加者は無事に全員ゴールしたが、みんなの意見は同じ「このまま明日のロングステージやったら死人が出る」。今日1日でみんなぐったり。明日この暑さの中で80kmなんてあり得ないという気持ちだった。長谷川さんと話していたら「昨日の夜、寝ている時、トラックでスピード練習しているみたいな呼吸してたよー」と言われた。「毎日楽しませてもらっています」とのことだけど・・・それって長谷川さんの睡眠を妨害してないか?夜も気温はあまり下がらず・・・ちょこちょこ目を覚ましては水を体にかけて耐えた。
ロングステージ。今日は1ステージで80kmを走る。コースタイトルによると今日走るのはシルクロードらしい。終盤は夜間走行になり制限時間は翌日のお昼。ゆっくり進む選手は途中のCP5で翌朝まで仮眠することができる。順位を気にする選手にとって今日は山場。タイム差が大きくなることと最終日の距離が短いため、このステージの結果で総合成績がほぼ決まる。自分にとってもこのステージは重要なステージ。しかし頭でわかっていても昨日の厳しい状況があっての今日なのであまり順位は気にせずにゆっくり行きたい気持ちがある。今日も間違いなく昨日のような有り得ない気温になるだろう。
スタート直後まずは先頭集団へ。スタートしてしまえば自然にやる気が出る。それがわかっているからスタート前は弱音を吐きまくりなのだけど・・・。今日は先頭集団の塊が大きい。みんなこのステージに賭ける気持ちが出ているのだろう。先頭集団についていくように走っていたが、時々走りやすい地面もあるものの基本的には昨日の終盤と同じ地面なので、でこぼこしていて右に左にラインを選びながら走る。よってスピードには乗れないため歩いてもそんなに変わらないかも。歩きと走りを交えるようにすると当然歩きの分だけ前とは差が開いていく。先頭集団もばらけて、だいたいそれぞれのいつものポジションに落ち着きつつある様子。自分も10番手ちょっとくらいに定着。曇っているが今日も暑い。最初のセクションから水をしっかり飲み冷却のために水をかける。
CP1から小野さんと一緒になる。特に話したわけではないが自分の後ろにぴったり小野さんがついてきている。CP1からCP2は走りやすいダブルトラック。日差しもないし平坦なので今のうちに少しでも前に進んでおこうといいペースで走る。上位でもすでに歩いている人もいて何人か抜かす。その中にテントメイトのジミーもいた。ジミーはここ数日調子は良さそうだったので上位追撃中と思っていたのでちょっとびっくり。声をかけると「ダメ」とジェスチャーしている。相当調子が悪そうだ。
CP2に到着してようやく小野さんと言葉を交わす。自分の後ろに付くことでいいペースでこれたとのこと。CP2を歩いて出発。少し食べ物を食べてからゆっくり走り始めるがどうも胃がむかむかする。向かい風が強くなってきたこともあって少し落ち着くまで歩くことにする。小野さんもあまり調子が良くないらしく2人で話ながら歩く。風に少し雨も交じって涼しく感じる。このまま涼しいといいんだけどなーと消極的なことを考えてみたりする。しばし暑さが和らぎ景色を見ながら気持ちよく歩く。この区間はコース説明に「salt flats」と書いてある。これはアタカマ塩湖の修行コースと同じ。しかしこちらは塩の大地の中に車が走れるくらいの道があって、そこを進めばよいので楽なコース。コース難易度も「Easy」と記載されている。「Easy」で涼しいこの状況で走らず歩いているのはちょっともったいないなと感じたが胃のむかつきがなくなるまではゆっくり行ったほうがよいと判断。通常ロングステージは少しくらい無理しても時間の早い涼しいうちに距離を稼いでしまったほうがよいのだが・・・(過ぎてみれば間違った判断だったように思える)。
小野さんが一度大きく遅れたが、CP3直前で走って追いついてきた。急に気持ち悪くなったが復活したとのこと。自分の気持ち悪さはいまいちすっきりせず。スタートから4時間経過してしまったのでガスター10を飲もうと思ったがCP3が見えてきたのでCP3を出てから飲むことにする。スタッフの目の前でうっかり薬を飲んだりすると「どこか具合が悪いのか?」など質問攻めにされることが目に見えている。それは避けたい。CP3に到着すると「世界で2番目に標高が低い場所」と書かれている。この場所の標高はマイナス160m。死海に次いで2番目に標高が低いのだそうだ。
CP3の近くには何かの作業場らしき建物が点々と立っている。CP3を出て建物の角を曲がりCPから死角になったところで荷物を降ろしガスター10を飲む。小野さんは調子が上がってきたようで走って先に行ってしまった。再スタートして走って小野さんを追いかけるが、小野さんは調子良く走っていてまったく差が縮まらない。道はトラックが行きかう広い道でひたすらまっすぐ続いている。小野さんには追いつけないし暑くなってくるしで苦しくなってきたので、送り出してくれた仲間たちを思い出し自分に「がんばれ、がんばれ!」と掛け声をかけながら進む。しかしどんどん暑くなってきて空腹感も出てきたので、がんばるのはやめてドライフルーツを取りだし歩きながら食べる。
ひたすら歩いてCP4を目指す。小野さんはあっという間に見えなくなった。小野さんとのここまでの4ステージの差はせいぜい30分程度なので、この調子だと小野さんが日本人トップで行くだろう。この状況なら自分がトップを引く役割は終わり。どうも調子が上がらないし南極出場権を確実に取りに行くことにして後は小野さんに任せた。
CP4に到着し選手の通過リストを見ると小野さんは20分前に通過したようだった。自分は微妙な胃の不快感と猛烈な暑さに嫌になってしまったのでCP4で大休憩することにした。シューズを脱いで日陰に横になり脚を高い位置に上げ血流を戻しつつドライフルーツを食べたり水を飲んだりして回復に努める。少しうとうと眠ったりしながら数十分が経ち(30分とも1時間とも思えるが時間は覚えていない)やる気を戻してCP4を出発。
時刻は15時を過ぎ最も暑い時間帯に。丈の低い植物が生えている草原に見える場所を歩きで進む。草原地帯の向こうに見えている山はたぶん火焔山だろうなと思う。ずっと行動していると思われる他の競技者は、足元がふらついたりしてペースが落ちているようだ。歩いていても次々と抜かしていくことができる。途中ピンクフラッグがわかりにくい場所がありサマンサ(主催スタッフ)がコースを逆走してフラッグの確認をしているのに会った。サマンサはいつもいろいろなところに現われていろいろな仕事をしているので尊敬である。今日も相当な暑さになっているらしく、この区間では車で臨時に水の補給が出ていた。
草原を越えるとCPに到着。ここは他のCPと違い「Water Point」となっていて水の補給のみ可能な簡易CPらしい。わずかな日陰は用意されていたので、またシューズを脱いで横になりリフレッシュを図る。もう完走第一で1つ1つのCPで休憩しながら確実にゴールを目指せばよいと考えていた。横になっていると隣の選手から「友達が戻ってきたぞ」と少し離れた木の陰を指差すので、よく見ると小野さんが倒れていた。驚いて駆け寄り、声をかけるとWater Pointを通過してCP5に向かったところ急に具合が悪くなり動けなくなってきたので引き返したそうだ。ここでしばらく休んで今日はCP5で睡眠を取り翌朝ゴールを目指すつもりとのこと。
Water Pointを出発しCP5に向かって歩く。両側が畑のまっすぐな道を進む。これまでは日陰がまったくない場所を進んできたがこのあたりは畑に沿って木が植えられているため木陰になっているところもある。暑さは変わらずだが緑が多いと少し涼しく感じる。ときどき畑で農作業している人やトラックにスイカを積み込んでいる人たちを見た。この区間は歩き続けていたが後ろから抜かされることもなく、歩いている人を抜かしたり木陰で休んでいる選手を抜かしたりもした。
しばらく進むと遺跡のようなお城のようなものが見えてきた。壁のあちこちに補修工事中と思われる足場?が組まれている。写真を撮りながら進むとピンクフラッグが遺跡の中へ続いていった。遺跡に入るとCP5があった。CP5はロングステージの中で睡眠をとったりお湯をもらって食事をしたりできる大チェックポイント。ゆっくりの選手はここで1泊して翌朝ゴールを目指すこともできる。まだ日が落ちるまでは時間があるが、この時間でも今日はもう終わりにしてこのチェックポイントに滞在する判断をしている人もいる。昨日、今日と猛烈な暑さにさらされているので安全に行くという判断もありだと思う。
CP5ではスイカを1切れもらうことができた。CP4, Water Pointに続き靴を脱いで横になる。スタッフがここに夜の間滞在する選手の確認を取っていて、厳密にはCP滞在は10分までというルールがあったようなと思い強制的に夜間滞在者にされてしまうと困るので、休憩はそこそこにして出発する。
遺跡を抜けて普通の観光客が出入りするゲートから外へ出る。出たところにピンクフラッグが見あたらず舗装路の左右を見ているとゲートのところにいた現地の人が指さしてコースを教えてくれた。CP5からCP6は距離が短いためすぐに着くと思っていたが、村のメインストリートような場所をひたすら歩きなかなか着かない。道の両側には民家が並び人がけっこう外に出てきている。何人かで集まって話をしていたり、何か食べていたり、いろいろな過ごし方をしている。何か食べているところで「食べていけ」みたいな身振りをされた(もちろんもらわなかった)。時刻は20時になりそろそろ夕方といった感じ。しかし長い距離を歩いてきた体ではまだ走りたくないくらいの気温。ときどき体に水をかけながら進む。
CP6は民家が立ち並ぶ村のはずれ。またシューズを脱いでごろっと横になる。だんだん日没も近くなってきているし残り20km程度なのでここで休んだらゴールまでは走るつもりだ。長い時間歩いている間に後方の集団とだいぶ差が詰まったらしく少し休んでいる間に今までのCPで見かけなかった選手が次々と到着・出発していく。小野さんがダウン中で再び自分が日本人の先頭に出たことで「少しはがんばらないと」という気持ちにもなり休憩は短めにする。1~2時間は夜間走行になるためCP6を出る前にザックに赤色点滅灯を着けハンドライトをザックの取り出しやすい位置に入れた。
しばらく舗装路を走って幹線道路を渡り荒地に入る。まもなく日没というところで後ろからかなりいいペースで走ってくる気配があり現れたのはアリだった。「なんでここにきてその勢いで走れているんだ?」と思った。アリは「shiroと走ったように一緒にゴールまで行こう」と声をかけてきた。アリは今年3月のアタカマ・クロッシングのロングステージで荒井くんとひっぱりあって走り一緒にゴールしていて、荒井くんは「それは最高の思い出だ」と話していた。それを再現しようということだ。ただパワーダウン気味の今の自分では今のアリの勢いでゴールまで走れるとはまったく思えなかった。しかし、この有り得ない(作り話のような)めぐり合わせに応えないわけにもいかず、とりあえず行けるところまでと思い「OK」と返してアリと並走する。
平地と下りは走り登りと足を取られるような砂地は歩いて進む。日が沈み「ライトをつけよう」とアリが足を止める。アリのザックには娘さんにもらった「あのお守り」が付いていた。ライトを出して再スタートする前にアリに「これを飲むか?」と差し出されたのは、半分ほど凍ったペットボトルのお茶。「こんなものどこで手に入れてきたんだ?」と思いつつ2人で半分ずつ飲む。キンキンに冷えていて甘くて少し炭酸ぽくシュワっとしておいしすぎるお茶だった。アリお主も悪よのう・・・。
満天の星空の下を2人で走る。アリは左足が痛むらしくときどき「ああっ」っと痛そうな声を上げるが「ゆっくりでいいよ」と言っても「問題ない」と追い込み体勢(こちらもきついです)。アリはすごい気迫。よく考えれば病気の娘さんに勇気を与えるために走っているのだから何があっても心が折れるわけがない。NHKのアタカマ砂漠番組では弱々しいところばかり映っていたが素晴らしいランナーじゃないか。時々歩いても走りやすそうになると、アリはすぐに「kabasawa OK?(走ってもOK?)」と言う。こちらの返事は常に「OK」とことん付き合ってやる。暗闇の中CP7に到着。真っ暗になるとコースロストの危険が増えるためCPでバディ(複数人のグループ)で行けと指示が出ることがある。自分とアリはすでにバディ状態になっているのでもちろん問題なし。バディを組めていない場合は後ろから来る選手を待たなければいけない。
CP7を出ると遥か前方に前の選手と思われる赤色点滅灯が見えてきた。追いつかないけれど少しずつ近づいている。ここまでがんばって走っているので少しくらい順位も上げたいところだ。しかし「もう一息」まで迫ったころ、坂の上にゴールのキャンプ地を発見。思ったよりも早く着いた。今日の順位はアリと走っている間には上げれなかったけど前とのタイム差は縮めることができただろう。ゴールゲート前でアリが「うおー!」と叫び、自分も「わあー!」と叫びながらフィニッシュ!「アリ、ありがとう!!」時刻は23時35分。ライト点灯から約1時間の夜間走行だった。アリの気持ちに応えることができ本当にほっとした。
テントに戻るとテント内順位は一番。ジミーが序盤で調子が悪そうだったのでちょっと心配。誰もいないのをいいことに着替えて簡単に洗濯する。洗濯は水を多く消費するので水が貴重な砂漠で人目があると少々気が引けるのだ。さっぱりして「これで完走も確実だー」とほっとした気分で就寝。
7時ぎりぎりに起床。小野さんに「朝食行かないんですか?」と言われつつ、素早く準備して小野さんと一緒に朝食へ。前日にすぐに装備チェックに行ける状態に荷物をまとめてあったので朝は何もすることがないのでぎりぎりまで寝ていたのだった。ついに今日からレース開始。「いよいよかー」と緊張感も高まり胃がむずむずする。このホテルの朝食が終わると次にきちんとした食事ができるのは1週間後。いつも砂漠へ行く直前のホテルの朝食はおいしいものをたくさん食べるという感じなのだが、今回のホテルの食事はやっぱりいまいちな感じでちょっと残念だった。
8時にブリーフィングに集合。アリがいたので小野さんが「シロー(荒井くん)の友達です」とご挨拶。アリはアタカマ・クロッシングも走りNHKの番組にも登場している。難病の娘さんに勇気を与えるために走っているランナーだ。自分とアリはアタカマでは顔を合わせていない。しかし荒井くんがアリに番組のDVDを送っていたのでお互いに映像を通してよく知っていたので「おおー!」と声を掛け合って握手する。ブリーフィングはだいたいいつも通り・・・いつも通り英語をほとんど聞き取れない(笑)今回はRacingThePlanet代表のメアリーが総指揮官ではなくアリーナがリーダーみたい。サブはいつものサマンサ。小野さんに要点を聞いて終了(といっても何も記憶に残っていないが・・・)
一度部屋に帰ってから9時45分から再びブリーフィングをおこなった場所で装備チェック。あまり細かくチェックされていろいろ質問されるとうまく受け答えできるか心配なのでスタッフの細かさ具合が気になる。装備を広げてチェックを受けている人を観察していると、かなり細かい!いままでにないくらい細かくチェックされています。砂漠レースでは数人のスタッフが100人以上の装備チェックをおこなうので、だんだん疲れてきて?後半になると適当になってくるのですが今回のスタッフは気合十分な様子が見て取れます。エジプトで一緒だったパオロが装備チェックを受けているのを見つけて話しかけたいと思ったが、厳しい装備チェック中なのでやめておいた。
いろいろ書類(たぶん死んでも文句言いません的なことが書いてある)にサインをして装備の計量をおこなう。荷物は8.25kg。レーススタート当日の朝食を除いた背負う重量は8kg程度だろう。小野さんとチェックの列に並んでいるときに香港のパッチをつけたおばちゃんに声をかけられた。日本のカップラーメンを手に持っていて「野菜も肉も入っているしカロリーも高くて素晴らしい。ありがとう!」とのこと。我々に言われてもー(笑)メーカーの人が聞いたら喜ぶだろうな。装備チェックは2段階あり、衣料などの装備品チェックと食料品のチェックがある。食料品のほうは専門知識のあるスタッフが担当する。装備品のチェックはすんなり終わり(義務装備なのに確認されなかったものもあり)、いよいよ面倒な食料品チェックへ。やってきたのはアリーナ。ちょっと嫌な予感、アタカマでも厳しく突っ込まれたが、そのときもアリーナじゃなかったっけ?(汗)じっくり食料品を見ていくアリーナ。そして、こちらを見て「にやり」。やばい(汗)やっぱり「少し食料が足りない」と言われる。アタカマと同じだー。というか食料アタカマと同じものを持ってきているんだから当然同じかー。近くにいた小野さんに通訳をお願いして交渉?開始。小野さんが「彼はエキスパートだから大丈夫」とフォローしてくれるが「知ってる」とアリーナ(そう認識してくれてるのは嬉しい)。で、仕方がないので今日のおやつ&夕食として別の袋に入れていた食料を見せて「今日の夜と明日の朝の分」と言って「OK」をもらった。この対処もアタカマのときと同じですが・・・。これで一安心。とりあえずスタートラインに立てる。
鈴木くんが装備チェックに苦戦。足りないものがたくさんあるらしく調達に走り回っていた。大丈夫かーと様子を見ているとチェック担当のおじちゃんがこちらを見て「にやっ」笑って指で銃の形を作り鈴木くんを撃つ真似。おじちゃん楽しいけどチェックは厳しいです。鈴木くんはどうしても調達できなかったものを栗原くんから借りてきて無理やり装備チェックを通したが、ずっと栗原くんと一緒にいるのをスタッフに見られていたので「あとで栗原くんも一緒に来て足りなかった装備品を2人揃って見せるように」と言われてしまっていた。それにしても鈴木くんのシューズにびっくり。MIZUNO WAVE EKIDENだった。ソールの薄い短い距離用のシューズだ。岩を踏めば足の裏にダメージがあるだろうし、焼けた砂の上では足裏が高温にさらされる・・・と思う。しかし鈴木くんは「これが一番マメができないんです」と言う。彼もサハラマラソン、ジャングルマラソンを走破したツワモノなのできっと自分に合ったやり方なんだろう。
部屋に帰るときにマレーシアのタンさんに会った。タンさんともアタカマで会った。自分が英語をほぼできないので会話はしていないのだが、やっぱり知っている顔に会うと笑顔が出て自然に握手したり抱き合ったりするのは砂漠レースの楽しいところだなあと思う。タンさんが「セイジ(宍戸さん)は?」と言うので「今回は来てない」と答え、お返しに「ジャックは?(タンさんの友達)」と聞き返した。ジャックは今回は来ていない。それからタンさんが「ケンジは?」と言うのでケンジって誰だ?と思い「(もしかして)コマイ?」と聞くと「Yes!」と言う。コマイさんは日本トップレベルのアドベンチャーレーサーでアタカマのときにはNHKの撮影クルーとしてレースを追いかけた。タンさんと仲良くなっていたのかー。
部屋に帰って最後のツイッター「これから戦場に行ってきます」と書き込み。荷物を持ってホテルをチェックアウト。砂漠に持っていくもの以外はホテルに預ける。日本人選手みんなで”使用前”写真を撮る。1週間後全員無事にここに戻ってこれますように!バスの中では爆睡。気がつくとだいぶ時間が経っていてバスはトイレ休憩に。すでにまわりは砂漠の風景なのに小奇麗な建物がたくさん立っていてお祭りみたいなことをしている。ステージ上で歌や踊りをしている。ここは新興住宅地?でも周りは砂漠だし、どんな場所でなんでお祭りなのかわかりません。レッドブルのノボリやテントがたくさんあるのでスポンサー付きで何かのイベント?きれいに整備されていましたが、トイレは中国式でした。穴掘って木の板が乗せてあって周りから丸見えなやつ。
暑いなー疲れたなー飽きたなーと思ってしばらくしてからやっとトイレ休憩が終了して(トイレ休憩というよりイベントに連れてきた?)やっとバス出発。もうしばらくかかるのかなと思ったら、わりとすぐに到着した。広場になっている場所でバスを降り両側に木が茂っているトレイルを数分歩いて今日のキャンプ地に到着。今回のレースはテントがいつもと違う。いつもRacing The Planetのレースでは白いテントなのだが今回は濃い緑色のテント。軍隊のようなイメージだ。キャンプ地の入口では現地の人が音楽を演奏している。アタカマでもあったが、こういうこの土地ならではのもので演出してくれるのはとてもいいと思う。レースをするだけではなくなるべくその土地の雰囲気や文化を感じたい。
装備チェックのときに「ラーメンありがとう」と言っていた香港のおばちゃんと再会。おばちゃんの名前はテニアさん。今回、美絵さんはレース中に震災チャリティ活動として海外の選手から日本の被災地宛のメッセージをもらうということをしているため、テニアさんにメッセージをもらおうということになった。するとテニアさんは近いうちに日本の被災地にボランティア活動をしにいく予定になっていると言い日本の被災地のことを話しながら涙ぐみ一緒に話をしていた長谷川さんと抱き合った。あまりにもいい話しすぎる。(自分は英語を直に理解できず通訳してもらって聞いているのが残念)香港の選手がその様子を写真に撮ろうとしてテニアさんに「写真は撮らないで」と言われたが素早く写真を撮って見せてくれた。これまたいい写真すぎ・・・。
まだレーススタート前なので、前日の夕食は自分で用意していくことになっているものの、大会側からペプシ、パン、スイカ、メロンの差し入れがあった。パンは重量感がありちょっと固くておいしいとは言いがたかったけどなんとか食べきった。レース前なのでエネルギーを体に溜め込みたい。韓国から今回は大所帯で、タッパーにたくさんの韓国料理を用意して大宴会に。ウルムチに住んでいる韓国の方からの差し入れらしい。「たくさんあるので一緒に食べよう」と誘ってくれ韓国・日本メンバーで楽しい食事の時間になった。韓国の人は日本語ができる人が多いみたい。以前から知り合いのユーさんはまったく会話に支障ないし、今回初対面のキムさんも日本語がすごく上手。キムさんはヒマラヤによく行く登山家で山の話をしてくれた。
成宮さんが頭が痛いと言って「すぐリタイアしちゃうかも」とか言っているので、自分がリタイアしてしまった時のことを話し、「自分はみんなに何かできるわけではないけれど一番の目標は全員で完走することなので必ず完走しましょう」と言った。とにかく仲間が全員完走することに勝る結果はないので、最終日のゴールをみんなで祝いたい。
キャンプ地をぶらぶら散歩。天山山脈がとてもきれいに見える。キャンプ地はこれが砂漠レースのキャンプ地とは思えないほどのんびりとしたくつろいだ空気そしてゆっくりと時間が流れている。しばらくして日没を向かえ天山山脈の端のほうに夕日が沈むのを見届けているとアリに声をかけられた。アリは自分の写真を撮り明日からの健闘を誓い合った・・・言葉は交わしてないけれどそんな雰囲気(笑)やっぱり23時くらいまでうっすら明るかったがテントの中に入ってしまえば暗く寝るのに支障はなかった。
8時に小野さん、長谷川さんとロビーで待ち合わせして朝食。朝食後部屋で何気なく携帯電話使えたりしないかなと少しいじると地域設定ができるようになっていて海外で使うモードにしたら地域が中国に設定された。するとどうやら使えるようになったようだったのでメールでツイッターに投稿したら送信できたようだった。ただ海外のパケット定額には申し込んでいないためネットを見たり大きい写真を投稿したりするのは無理そう。
10時に再度ホテルのロビーで待ち合わせして一緒に町へ繰り出すことになった。昨日は個人で宿泊を予約して宿泊したが、今夜は大会主催者が予約して部屋を割り当てられるため一度荷物を出してチェックアウトしようとしたが、そのまま宿泊した部屋を今夜も続けて使うようになった。大会主催者の割り当てで自分と小野さんが相部屋だったため、小野さんだけチェックアウトして自分の部屋へ移動してくることになった。
10時半ごろホテルを出発し紅山公園へ向かう。ホテルの前の大通りを渡るときに地下道のようなものもあったが小野さんが「どうします?現地人と同じように(地下道を使わず)渡りますか?」と言うので「現地人と同じように」と返すと「ですよね!」と嬉しそう。車の切れ目を狙ってダッシュで渡るのは日本ではできない面白さ。エジプトに比べれば車の運転もおとなしく全然楽勝だった。
ウルムチはさすがに砂漠に囲まれているのでもわっとした暑さ。しかし緑豊かな公園があったり涼しげな印象をいくらか演出している。公園の隣にはプールもあった。紅山公園は観光場所のほとんどないウルムチの中で唯一に近いくらい観光地な場所。標高差100mほどの岩山の上からウルムチの市街地を一望することができる。ウルムチは周辺が砂漠地帯とは思えないほどの大都会。高層ビルもそびえたっている。岩山の山頂で写真撮ってしばらくのんびりする。いい景色だったので1枚くらいなら携帯で写真を送信しても大丈夫だろうと思い写真付でツイッター投稿する。
紅山公園を出るとスポーツ用品店が並ぶ通りがあった。道路を挟んだ反対側にはスタジアムがありこの辺一帯はスポーツ施設が集まっている場所のようだ。今日スタジアムでは何かコンサートがあるようでポスターが貼られテレビ局の中継車が来ていた。ランナーの大きなポスターが出ているスポーツ店の前で足を止めちょっと見ていこうということで店の中へ。中国オリジナルなものがないか期待してみたが割と普通な感じだった。中国を感じたのは卓球とバトミントンの用具が充実していたこと。あくまでもこの店の規模に対してではあるが、やっぱりこういうのは中国で人気が高いのだろう。他のお店では入口に卓球の福原愛選手の写真があったり。
これといって見て回る場所がないので繁華街のほうへ。市場とかあってお土産を見れると嬉しいなというのが狙い。しかし普通に都会で特に見るべきところもなく。お昼をまわってお腹もすいたので、見た感じ安全そうなラーメン店ぽいお店に入る。お店はほんとうにそのまま日本にあってもおかしくないくらい普通。冷やし中華のようなものを食べたが普通においしかった。
ほんとうに普通に都会なだけなので、早めにホテルに戻ることにし戻りかけたが、長谷川さんが市場とかもう少し面白いものを探したいとのこと。確かに何の収穫もないまま戻るのは残念なのでガイドブックを見てウイグル族が多く住んでいるという地区を目指して歩く。繁華街の中心部を離れるとだんだん書かれている文字が中国語からアラビア語に変わってきた。さらに進むとモスク(イスラム寺院)を発見。その周辺はエジプトに行った時に感じた雰囲気そのもの。もう中国という感じではないのだがこういうほうが面白い。小野さんと長谷川さんもテンションが上がるツボが同じらしく怪しい路地を見つけては入りこんでいく。路地に入れば入るほど中国語は消えてアラビア語に。
地区によって肉市場や布市場みたいに分かれている。長谷川さんお土産購入。言葉が通じないのだが小野さんが携帯のGoogle翻訳で素早く「負けてください」という中国語を表示してお店のおばさんに見せるとあっさり3割引くらいに。さらに「2つ買うからもう少し安くしてよ」みたいなことをしていたがそれはさすがに無理だった。ホテルに帰るためにウルムチ中心部に向かうとイスラムな雰囲気はふっと消えて中国に戻った。なんか不思議な感じだった。帰り道に通った公園では平日真昼間だというのに木陰で麻雀をしている人達がいっぱい。さすが中国だ。
少し疲労を感じつつホテルへ帰りつく。6時間近く歩きたぶん15kmくらい?レースに先立ちステージ0って感じ。気温は割と普通の暑さだったかな30℃ちょっと。東京よりは涼しかったような。ホテルのロビーで日本人に話しかけられる。ゴビ参加者の成宮さんだ。ここで初対面だったのだが「こんな人が砂漠レース出ちゃうの?」っていうくらいのんびりおっとりした女性。まだ荷物の整理に大苦戦しているとのことなので「何か解決できないことがあれば何でも相談してください」と伝える。でも砂漠レース6回目の美絵さんと相部屋なので美絵さんが到着すればアドバイスももらえるだろうし問題ないだろう。とりあえず後で夕食で合流してゆっくり話を聞くことにして別れる。
部屋で小野さんと最後のパッキング。出発前にもおこなったが装備リストと突き合わせてチェックしパッキングしていく。部屋の体重計が壊れていて重さを測れなかったのが残念。しかしそれなりに満足のいく軽さにはなったと思う。背負っても「重い!」という感じではなく「走る!」とやる気がみなぎってくる。
夕食に集合する。栗原くん、鈴木くんも到着して、あとは美絵さんだけ。北京空港の乗り換えが昨日の大雨の影響でまだ混乱しているのかもしれない。外に食べに行くほどの元気はなくホテル内のレストランで夕食にすることにした。高級そうなレストランばかりでメニューを見せてもらっても「高いなあ」という感じなのでけっきょく喫茶店に併設されたリーズナブルなレストランで食べることにした。ビュッフェで好きなものを取って食べる。朝食もここだったので同じようなものが多くしかも特においしいわけでもないという・・・まあまずくはありませんが。いつもレーシング・ザ・プラネットのレースで使うホテルは現地の高級ホテルで食事はとても美味しい印象があっただけにそれに比べるとちょっと残念な感じだった。このホテルもここでは高級ホテルだと思いますが。
成宮さんは、あまりにのんびりした人柄でとても楽しいです。「明日から何が始まるのかわかっているのか?」と思いながら話をしていましたが、そういえば成宮さんはすでにサハラマラソンを完走しているのでした。サハラでは血を吐きながらゴールを目指しなんとか完走したそうです。話す口調からは想像もつかないような強靭な精神力を持っているようです。サハラをゴールしたときには達成感も何もなかったそうでそのためもう一度リベンジ?に来たようです・・・が、すでに日本に帰りたいとかリタイアしますとか言っています。食事をしていると韓国のユーさん登場。「久しぶりー!」と握手。ユーさんとは東京での飲み会とエジプトのサハラレースで会っている。サハラレースのときはリタイア寸前に治療をしてもらったりお世話になっている。「調子はどう?」と聞かれ「いい感じ」と言うと「でも心配(笑)」と返された。今回はユーさんと再会しテントメイトでもあるので楽しくなりそうだ。
しばらくして美絵さんがホテルに到着。ウルムチ空港で日本在住の外国選手や他の選手と一緒になってタクシーで到着したとのこと。来る途中でお友達になった海外選手と一緒に夕食をしていましたが、少しだけこちらのテーブルに来てこれで日本人全員揃った。装備の話をしていると「電解質飲料かソルトタブレットのどちらかが1週間分あればよい」という話が出た。少し前までは確か「電解質飲料」でなければいけなかったので電解質の粉末や水に溶かすタブレットを用意し、それ以外に自分に合ったソルトタブレットを使っていたのだが、聞いたところによるとソルトタブレットだけでもよくなったようだ。夕食を解散した後、部屋に戻って装備のルール説明を見ると確かにソルトタブレットのみでもよいことになっていたので、たぶん使わないけどルール上持っていくことにしていたエレクトライトショッツを装備から外す。
ゆとりを持って装備の確認も終わり就寝。いよいよ明日かと気持ちも盛り上がってくる。
4時50分起床。1時間半くらい睡眠できたか?眠れていない割には緊張感があるためか眠くない。さっと準備して出発。5時33分北戸田から電車に乗り成田を目指す。電車の中携帯電話で昨日からtwitterにたくさんメッセージいただいていたものに返信する。成田に7時に到着。中国国際航空のチェックインカウンター前で長谷川さんと合流。チェックイン後に長谷川さんが「元」に両替。ちょうど両替窓口が開いたところだった。
搭乗ゲートに8時ごろ到着。8時20分に最後のtwitter更新をおこない携帯電話の電源OFF。今回は最低限の時間でレースに行って帰ってくるだけなので現地でネット接続する予定もなく帰国までこちらから情報発信することはないだろう。パソコンは持ってきているのでもしかしたらウルムチのホテルなどでネットが繋がって何かするかもしれないが・・・。基本的にはパソコンはいざというときにネットさえ繋がれば日本語でいろいろ調べられるという緊急時用に持ってきている。
予定通り飛行機離陸。機内ではずっとうとうとしていた。少しは睡眠不足を解消できたはず。4時間程度で北京空港へ。窓側の席だったので北京の上空からの風景を見たかったがうとうとしている間に着陸。しかし真っ白に曇っていたので上空から景色を見ることはできなかっただろう。地上も白っぽくもやっとしていて非常に見通しが悪い。これは曇っているのか?それとも空気が汚れている?
入国審査に並んでいるときに離れた列に小野さんらしき人物発見。順番的に自分より少し前くらいだったので入国審査を通過したところで声かけれるかと思ったが北京に慣れている小野さんは動きが早くさっさと行ってしまった。預けたスーツケースの受け取りはスムーズにおこなうことができ国内線乗り換えのターミナルへ。再度の荷物預け(チェックイン)のところで小野さんに追いついて合流。
ウルムチへの飛行機搭乗まで3時間ほどあったのでケンタッキーで暇つぶし。初めての「元」で昼食購入。店員さんは中国語しか話さず、メニューの写真を指差して訴えかけて購入。仮に店員さんが英語できても自分の英語力だと似たような感じになるけど(笑)オレンジジュースらしきものが不思議な味だった。(まずくはないけど不自然な甘ったるさ)北京空港は低空まで視界が悪く仕事でよく来ているという小野さんに「いつもこんな感じなのか」と尋ねてみると晴れていてももやっとしていて視界が悪いことが多いらしい。それでも北京空港は市街地からは離れているため市街地に比べればましなのではないかとのことだ。あと中国(北京)ではジョギングはまだ一般的ではないようでジョギングしていると指差して笑われるそうです(笑)
15時30分ごろ搭乗ゲートに移動するが搭乗の始まる気配はなし。出発が遅れる見込みになってきた。ウルムチのホテルの予約で到着時刻を21時にしてあってJTB中国からホテルにチェックイン時間を待ってもらうようにしてあるので飛行機が遅れたときにホテルの予約がそのままになっているのか少し不安。
売店でジュースとお菓子を買ったらジュースが500mlで2.8元、お菓子が23元と価格のバランスがおかしい。中国国内で生産されたものは安く、輸入品はすごく高くなっているようだ。たぶん元と外貨のレートのせいだと思う。
飛行機の遅れは大雨のせいのようで飛行場にはどんどん離陸できない飛行機がたまっていく。時々着陸してくる飛行機は水しぶきを上げて滑走路を走っていく。17時前には外は暗くなってしまい「もう夜?」と思ったが、そんなわけはなく真っ黒な雲に覆われてしまったようだ。この日北京では10年に一度の大雨で洪水になり車が流されたりして大変だったらしい。
ウルムチ行きは欠航にならず搭乗することができた。しかし動き出す気配はなく機内食が出される。「機内食が出たということは当分離陸の見込みはないということか」とがっかりしていると、食べ終わったくらいに飛行機が動き出しCAがゴミ袋を持って急いで機内食の片付けを始めた。
無事に19時半ごろ離陸し飛行機は夕日を追いかけるように飛んでいく。夕方?は22時ごろまで薄明るい感じで、窓の外が真っ暗になって少しして23時ごろウルムチに到着。荷物はスムーズにピックアップでき小野さんがホテルに電話してタクシーに乗る。タクシーの運転手は現地語しかわからず目的地がうまく伝わらない様子だったが。小野さんがホテルに電話をつなぎ電話を運転手に渡してホテルと会話してもらって解決。海外でもそのまま使える携帯電話はやっぱり便利だなと思った。もっとも自分の場合、単語並べて身振り手振りの会話?なので電話だけでホテルにどうしてほしいのか伝えるのは困難だと思われるが・・・。小野さんがいてくれてよかった~。
ホテルに着くと運転手は100元だと言う。小野さんは「50元くらいのはずだ」と譲らず口論になりかけ長谷川さんがホテルのフロントの人を連れてくる。ホテルの人とタクシーの運転手で話をしてもらって50元で決着(そもそも50元が正規金額)。タクシーの運転手はわざとメーターを回さずに高い料金を言ったようだ。小野さんによると中国にはこういうタクシーはほとんどいないとのことだった。
ホテルにチェックインするときは、その場で現金で宿泊費540元を支払うのだと思っていたらデポジット(後から戻ってくる)で1600元を渡すということになっていた。宿泊費よりも高いデポジットとは・・・。クレジットカードでデポジットを払う。今回は滞在も短くお金を使う場面も限られているのでクレジットカードはなくてもいいか?と思っていたが念のため持ってきておいてよかった。
部屋に入ってシャワー浴びてうっかり寝たら3時。再度きちんと寝て8時起床。
20時から新宿で最後の晩餐会(壮行会)をおこなう。今回留守番の佐藤くん、先日アドベンチャーレースに一緒に出場したメンバーとpiece of earthで10名の会になった。6月4日におこなったアタカマ報告会でpiece of earthが用意してくれたゴビ・マーチに向けての応援メッセージ色紙に追加でメッセージを書いてもらい今回使うウェアでまだワッペンが付いていないものにみんなでワッペンを縫い付ける。前日にまだ準備ができていないというのは情けないことでもあるが、みんなに縫い付けてもらったというのはよい思い出になるのではないかと思う。みんなでわいわいおしゃべりして緊張もほぐしてもらえ「がんばって!」と送りだしてもらった。かならず完走してよい報告をするぞ。
帰りに応援メッセージ色紙を縮小カラーコピーして帰宅してからラミネート加工した。レース中はこれをお守り代わりにザックにつける予定。すっかり遅くなり2時半くらいに布団に入ったが暑くて眠れず、最後に時計を見た記憶は3時10分だった。